奏者同士のアイコンタクトまで捉えた充実の映像を配信
「クヮルテットは、ソロとオーケストラとを問わず、弦楽器奏者のすべての基本。だから、世界に通用する弦楽器奏者を育てるには、トップレベルの指導者による集中的なクヮルテットの実習が欠かせない」
世界的指揮者 小澤征爾の信念のもと、25年前に長野の奥志賀高原で始まったのが「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」。昨年に続き今年もコロナ禍での開催となってしまったが、原田禎夫(チェロ)、川本嘉子(ヴィオラ)、フェデリコ・アゴスティーニ(ヴァイオリン)という世界トップレベルの講師陣が、オーディションで厳選された16名の若い音楽家を指導した。
9月6日に始まったアカデミーは、連日講師陣の熱い指導を受け、12日の奥志賀公演、そして14日の東京公演で締めくくられた。その東京公演の本番前、講師の原田禎夫にアカデミーについて話を聞いた。
ーこのアカデミーの意義を改めて教えてください。
基本的には小澤さんの信念に同感して私も参加しました。自分の師でもある齋藤秀雄先生もクヮルテットをものすごく大事にしていました。4人の奏者がハーモニーを作る、でも指揮者がいないので、一人ひとりが指揮者みたいな気持ちにならないとまとまらない。やはり音楽の基礎みたいなもの。しっかりした土台を作る。そういう訓練を若い時から受けることが大事なんです。クヮルテットは技術的なことも含めて、ありとあらゆることを勉強する機会で、オーケストラでは学べないことも身につけることができるんです。
ーコロナ禍でのアカデミーは?
去年は2組だけ、そしてドイツからオンラインでのレッスンでした。確かに目が届くということはあったけれど、不思議なことにオンラインでレッスンをしてスイッチを切った後が本当に虚しくて…。なにか憂鬱になってしまうというか。
でも今年2年ぶりに奥志賀に行けて、やはり生の音を聴くことで彼らのエネルギーをより感じられました。今年の生徒は学ぶ姿勢が本当に素晴らしかったです。食らいついてくるというか。こういう時って教える側も疲れないんですよ。あまり勢いがなかったり、表情がなかったりすると、教える側は「もっとやれ、もっとやれ」とすごく疲れるんです。今年は「跳ねっ返り(教えたことに対する反応)」がすごかった。コロナ対策もあって時間は短かったけれど、彼らは一生懸命勉強したので、たった2〜3日でグワッと伸びましたよ。
ー今日一日のリハーサルでも変わるくらいですか?
本当にその通りです!一回一回伸びていきます。音楽会も一回やっているし(9月12日奥志賀公演)、そこで学んだことも多いにあります。それにはやはりこのアカデミーのようにちゃんとした教育が必要なんです。小澤さんがやっているこの取り組みには、あの人の執念みたいなものがあって、それが時とともに引き継がれて、いまは伝統みたいになってきている。それが素晴らしい。
そして今年のアカデミーの集大成となる東京公演本番。学んだものをすべて発揮するべく特別な緊張感が漂う。若者らしい純度の高い集中力で、息も詰まるような空気のなか熱演を繰り広げた。
この公演の様子を10月2日から配信することが決まっている。会場では生の音楽を体感することができたが、映像では客席からは見ることができない表情や、まるで音が聞こえるかのようなアイコンタクトまでも克明に捉えている。若い音楽家の熱い眼差しは、芸術への情熱、切なる思いを雄弁に物語っている。それをリアリティある音響と映像美で結晶させた。生演奏はもちろん素晴らしいが、映像だからこそ伝えられる感動を、是非味わってほしい。
【配信情報】
小澤国際室内楽アカデミー奥志賀 東京公演 アーカイブ配信
お申込みサイト↓
イープラスStreaming+
お申込み期間:2021.9/25(土)AM10:00~10/8(金)22:00まで
視聴可能期間:10/2(土)AM10:00~10/8(金)23:59まで
視聴料 1,000円(税込)