弦楽で描き出す多様な音楽世界
アンサンブル・ノマドが現在、定期演奏会で掲げているテーマは「中心無き世界」。ジャズをフィーチャーした第1回に続く今回は、「弦が運ぶもの」と題して弦楽アンサンブル作品をプログラミングした。
ストラヴィンスキー新古典期の「弦楽のための協奏曲 ニ長調」に始まり、ぴんとはりつめた武満徹「ソン・カリグラフィ Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ」へ。スペイン出身のI.エストラーダ・トリオの「果樹園での祈り」は今年生まれた作品で、精緻に統御されたダイナミズムが堪能できる。イタリアのG.C.タッカーニ「ドゥーラ・ロッチャ」はファゴット(ソロ:塚原里江)と弦楽合奏がハードにぶつかり合う。ノマドではおなじみ、近藤譲の「クイックステップと緩やかな終結」はノマドの創設者で指揮を務める佐藤紀雄自身が初演した作品だ。最後はカナダ出身C.ヴィヴィエのどこかアルカイックな日本イメージ(「ジパング」)に帰着する。
それぞれが個性的で傾向を束ねられないのは、まさに“中心無き世界”。ノマドの弦メンバーに豪華ゲスト陣が加わり、総勢15名の弦楽合奏で臨む。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年10月号より)
2021.10/11(月)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール【配信あり】
問:キーノート0422-44-1165
https://www.ensemble-nomad.com