在京3楽団と豪華ソリストがホールの再開を祝う
今年3月から9月末まで改修工事のため休館していたかつしかシンフォニーヒルズが、10月にリニューアルオープンする。リニューアル記念公演として、NHK交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団の3つのオーケストラが招かれ、それぞれがクラシック音楽の真髄ともいえる名曲プログラムを披露する。
まず、10月9日に登場するのは川瀬賢太郎指揮N響。2014年より神奈川フィル常任指揮者を務め、若い世代を代表する指揮者として目覚ましい活躍をくりひろげてきた川瀬が、日本のトップオーケストラであるN響と共演する。歴史のある名門という印象が強いN響だが、近年は楽団員の世代交代が進み、今や在京オーケストラの中でも若手の多いオーケストラになっている。アンサンブル能力の高さに加えて柔軟性も高まっており、川瀬との相性にも期待できそうだ。プログラムはベートーヴェンの「エグモント」序曲、チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」(原典版)、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番より第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」(チェロと弦楽合奏版)、ベートーヴェンの交響曲第7番。チェリストには難関で知られるミュンヘン国際音楽コンクールで日本人初の優勝を果たした気鋭、佐藤晴真を迎える。今もっとも注目される日本人チェリストだろう。
10月23日は小林研一郎が読響を指揮する。「コバケン」の愛称で親しまれるマエストロは昨年80歳を迎えた。普通の指揮者であれば枯淡の境地を期待されるところだろうが、そこは「炎のマエストロ」、尽きることのない情熱を音楽に注ぎ込んでくれるはず。読響では特別客演指揮者を務めており、その絆は深まるばかり。プログラムはチャイコフスキーの交響曲第5番とヴァイオリン協奏曲。マエストロの十八番、交響曲第5番ではどれほど熱いドラマがくりひろげられることだろうか。ヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるのは服部百音。活躍の場をどんどんと広げている1999年生まれの新星だ。服部良一、服部克久、服部隆之と続く音楽一家の生まれ。ザハール・ブロンに師事し、数々のコンクール受賞歴を誇る。
11月21日は横山奏指揮新日本フィルとピアニストの横山幸雄が共演。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番とドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が演奏される。だれもが親しみやすく、なおかつ繰り返し聴いても感動が訪れるという意味では、これ以上の名曲プログラムもないだろう。指揮の横山奏は2018年第18回東京国際音楽コンクール〈指揮〉で第2位および聴衆賞を受賞した若手。この年は1位を沖澤のどか、2位を横山、3位を熊倉優が受賞し、日本人で上位を独占した豊作の年だった。超有名曲に対して、どんなアプローチで臨むのだろうか。一方、横山幸雄は今年デビュー30周年を迎えて、円熟期を迎えている。チャイコフスキーの核心に迫る堂々たる名演を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年10月号より)
N響ベストクラシックス 川瀬賢太郎×佐藤晴真×NHK交響楽団
2021.10/9(土)16:00
小林研一郎 入魂のチャイコフスキー 小林研一郎×服部百音×読売日本交響楽団
10/23(土)14:00
フレッシュ名曲コンサート 横山 奏×横山幸雄×新日本フィルハーモニー交響楽団
11/21(日)14:00
かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
問:かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233
https://www.k-mil.gr.jp
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。