現代音楽をアクロバティックな音の饗宴として聴かせてくれる点で、アルディッティ弦楽四重奏団ほどエキサイティングなグループはいない。星々の明滅のようなシャリーノ作品を影とするなら、野平作品では音は実存性を帯び激しい暴走を繰り返す。クセナキス作品ではさらに強固な存在の強度を示すが、細川作品では波動に変わる。リゲティ作品は1960年代前衛運動の総決算のような密度で進んでいく。作品ごとに変わる力点を的確に捉え、こともなげに実現していくところに、ベテランの貫禄がある。オープン間もない高崎芸術劇場で収録され、幅広いレンジにわたる音の動きが克明に捉えられている。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年1月号より)
【information】
CD『細川俊夫:パッサージュ、野平一郎:弦楽四重奏曲 第5番 他/アルディッティ弦楽四重奏団』
シャリーノ:Codex Purpureus Ⅱ
野平一郎:弦楽四重奏曲第5番
クセナキス:AKÉA
細川俊夫:パッサージュ(通り路) 弦楽四重奏のための
リゲティ:弦楽四重奏曲第2番
アルディッティ弦楽四重奏団
野平一郎(ピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4083 ¥3000+税