トラックスラーは各国のホールや音楽祭に招聘され、D.オッテンザマーらとの室内楽アルバムでも高く評価されるピアニスト。ウィーン・フィルのピアニストおよびウィーン国立音大教授としても厚い信頼を寄せられている音楽家だ。待望のソロアルバムに選んだのは、シューベルトとリストの作品。シューベルトの「楽興の時」D780は温かくも寂寥感を滲ませ、心に染み入る演奏。リストの「ダンテを読んで」では技巧性の強調を感じさせず、「オーベルマンの谷」では深みある響きで、作品それぞれの規模や世界観を明快に伝える。真のヴィルトゥオーゾであることを証明する一枚だ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年11月号より)
【information】
CD『シューベルト&リスト/クリストフ・トラックスラー』
シューベルト:楽興の時/リスト:巡礼の年 第2年「イタリア」より〈ダンテを読んで〉、同第1年「スイス」より〈オーベルマンの谷〉、歌劇《ファウスト》のワルツ(グノー)
クリストフ・トラックスラー(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-9269 ¥3300(税込)