英国ロイヤル・オペラ極めつけの《椿姫》を配信で味わう

名歌劇場の看板プロダクションに加わった、新たな伝説の1ページ

 ヴェルディの《椿姫》は、世界で最も上演されている名作オペラの一つだ。人気オペラには、人気プロダクションがつきものだ。そして、それにまつわる伝説も。
 1994年にリチャード・エアの演出で制作されたロイヤル・オペラ・ハウスの《椿姫》は、四半世紀を過ぎた今でも絶大な人気を誇る、ロイヤル・オペラ・ハウスの看板プロダクションである。美しくもリアルなセットと衣裳、音楽と一体になった、鮮やかで無理のない展開。エアの《椿姫》は、いつも完売の人気だ。

(C)ROH 2019. Photographed by Catherine Ashmore

 誕生の時から伝説だった。映画・演劇界の大御所 エアが本作を初めて演出したのに加え、名指揮者の故サー・ゲオルク・ショルティが、初めて《椿姫》に挑んだプロダクションだったのだ。さらに主役に抜擢された美貌のソプラノ、アンジェラ・ゲオルギューの登場が衝撃だった。彼女の歌と演技に揺さぶられたショルティは、ピットで涙していたという。

 ロイヤル・オペラの《椿姫》は、その後もルネ・フレミング、アンナ・ネトレプコら当代きってのプリマたちを迎え、映像も発売されて、数えきれないオペラファンを魅了してきた。その《椿姫》の近年最高の収穫が、今回ストリーミング配信される2019年の公演である。何より主役の三人が、これ以上ないほど理想的なのだ。

左:チャールズ・カストロノーヴァ(アルフレード) 右:エルモネラ・ヤオ(ヴィオレッタ)
(C)ROH 2019. Photographed by Catherine Ashmore

プラシド・ドミンゴ(ジェルモン)
(C)ROH 2019. Photographed by Catherine Ashmore

 ヴィオレッタ役エルモネラ・ヤオは、心に染みるしっとりした声と美しい舞台姿で、欧米の舞台を席巻するプリマドンナのひとり。ヴィオレッタは200回(!)以上歌っているというシグネチャーロールだ。「この役を歌うたびにいつも感動する」という言葉の通り、魂の底までヴィオレッタになりきった演唱で、聴き手の心をかきさらう。

 相手役がまた素晴らしい。アルフレード役のチャールズ・カストロノーヴォはこの役でブレイクし、ナタリー・デセイ、ディアナ・ダムラウら多くのスター歌手と共演を重ねてきた。情熱的でまろやかな声と甘いヴィジュアルは、若く無鉄砲で、恋に夢中になっているアルフレードにどんぴしゃり。ヤオとの息もぴったりだ。ジェルモンを演じる名歌手プラシド・ドミンゴとも、ほんとうの父子のように意気投合している。

 《椿姫》に悪人はいない。ただ、「社会」という通念に縛られているために悲劇が起こる。今回の主役たちは、そんな私見を確信させてくれた。何度見ても心動かされる名プロダクションに、新しい伝説の1ページが加わった。
文:加藤浩子

(C)ROH 2019. Photographed by Catherine Ashmore


【information】
英国ロイヤル・オペラ《椿姫》

指揮:アントネッロ・マナコルダ
演出:リチャード・エアー

管弦楽:ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
合唱:ロイヤル・オペラ・ハウス合唱団

出演
ヴィオレッタ:エルモネラ・ヤオ
アルフレード:チャールズ・カストロノーヴァ
ジェルモン:プラシド・ドミンゴ
グランヴィル医師:サイモン・シバンブ
アンニーナ:キャサリン・カービー

映像内容:2019年1月ロイヤル・オペラ・ハウス(約137分)

配信期間:2020.10/16(金)0:00〜12/10(木)23:59
※視聴期間中、ご購入日に応じて最長7日間、オンデマンドでご覧いただけます。
※視聴券は10/15(木)0:00〜12/9(水)23:59の間、お求めいただけます。
ご購入日によって視聴期間が異なりますのでご注意ください。
※ご視聴は終了時間(毎週木曜23:59)までとなります。映像の途中でも、途中終了となりますのでご注意ください。

配信メディア:Streaming+

料金:990円(税込)(プレイガイド手数料無料)

チケット販売期間:2020.10/15(木)0:00 〜 12/9(水)23:59
購入URL:イープラス https://eplus.jp/latraviata-vod/
※配信開始日の2日前からはカード決済のみでの販売となります。

ライブ・ビューイング・ジャパン公式サイト
https://liveviewing.jp/contents/traviata/