【CD】大石哲史、林光を歌う―雨の音楽―

 こんにゃく座の大石哲史、待望の「林光を歌う」。基本的には平明ながら凝った和声やメロディも散りばめられて誠に含蓄のある林光の歌たちを、大石はなんの虚飾も交えずに真っ直ぐ、素直に歌う。その実直な歌いぶりと明晰でていねいな日本語には居住まいを正される。なるほど完璧に整った演奏ではないが、林光の歌にはそういうものは重要ではない。手作りのあたたかみ、親密さこそが必要なのだ。それが大石の歌にはある。服部真理子の柔らかに煌めくピアノ(カホンも演奏)、鮮烈なアクセントをもたらす野原孝のサクソフォンもまた良い仕事ぶり。「うた」を愛するすべての人に。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年11月号より)

【information】
CD『大石哲史、林光を歌う―雨の音楽―』

林光:雨の音楽、ぼくがつきをみると、ちょうちょうさん、みちでバッタリ、赤い魚と白い魚、魚のいない水族館、ねがい、五月の夜(アオバズクの季節)、この害虫(むし)だけは…、舟唄、告別、壁のうた、八匹めの象の歌、花のうた、歌芝居《魔法の笛》より〈遠いはるかの時の彼方から〉 他

大石哲史(うた)
服部真理子(ピアノ/カホン)
野原孝(ソプラノサクソフォン/アルトサクソフォン/口笛)

コジマ録音
ALCD-7258 ¥2800+税