
右:アレクセイ・ゴルラッチ ©Monika Lawrenz
世界中のオーケストラがインターナショナル化して個性が薄れてきた……と言われ始めて久しいが、いまだ東欧のローカル色をしっかり残している楽団のひとつが、今夏来日するスロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団である。誤解を恐れずに言えば、水も漏らさぬ精密さ、圧巻の機能性、といったものを何より重視する人には刺さりにくいだろう。しかし、「チェコスロヴァキア」という国があったことを知らない人が増えていく時代に、スラヴ圏の空気と土のにおいを伝える音色、おおらかな雰囲気ながらも要所でみせる特別な集中力。こういった要素を味わいたい人には喜ばしい体験となるはずだ。
今回、同楽団の首席指揮者ダニエル・ライスキンが率いる日本ツアーは、アレクセイ・ゴルラッチとオルガ・シェプスという人気と実力を兼備したピアニストが帯同し、4つのプログラムで全国9ヵ所を廻るという大規模なもの。そのうち“チェコもの”が中心になったプログラムは2種類あり、大阪のフェスティバルホールの公演は、スメタナ「モルダウ」とドヴォルザーク「新世界より」が取り上げられる。2020年からポストに就いているライスキンとの関係性も深まり、“こういうチェコものを聴きたかった”という、懐かしくも温かい演奏を実現してくれるだろう。また、浜松やミュンヘン国際コンクール優勝歴をもつゴルラッチとのベートーヴェン、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」も注目となる。まだ30代後半の名人が、活力と風格をもつ充実のベートーヴェンを聴かせる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年7月号より)
ダニエル・ライスキン(指揮) スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団
2026.6/28(日)14:00 大阪/フェスティバルホール
問:コンサートイマジン 03-3235-3777
http://www.concert.co.jp
※日本ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。
