田部京子(ピアノ)

深淵なる20年を集約した究極の一夜

 明確なタッチで曲の姿がくっきりと描き出される。それでいて音楽は、優しい抒情を漂わせ、美しく深い…。田部京子は、かような演奏で聴き手を魅了し、熱い支持を集めてきた。そして12月、CDデビュー20周年を記念した特別リサイタルを行う。演目は、彼女の名盤から選り抜かれた珠玉の作品集。前半は、田部の名を一般ファンにも広めた吉松隆の「プレイアデス舞曲集」から3曲、これまた評価の高いグリーグ「ホルベアの時代から」のアリア、昨年大絶賛を博したブラームスの後期小品、今年3月に初演し、大きな話題を集めた佐村河内守の「ピアノのためのレクイエム」など、後半は、20年前に録音し、国内外で賞賛されて評価を決定付けたシューベルト最後のソナタ第21番(一人語りのようなしみじみとした演奏は絶品)という垂涎の内容だ。日本を代表する実力派ピアニストとなった彼女が、今これらをどう弾くのか? 本公演はファン必聴にして、新たに彼女を知るにも相応しい。それにしてもこれが552席のホールで一夜限りとは…。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年12月号から)

★12月5日(木)・浜離宮朝日ホール 
問 朝日ホールチケットセンター
 03-3267-9990
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu