
2025年度(第35回)青山音楽賞を授かったピアニスト、小井土文哉が3月20日、東京・銀座の王子ホールでシリーズ化したリサイタルの「Vol.2」に臨む。デビュー以来一貫して傾倒してきたスクリャービン5作品を前半の2部、後半の1部に置き、その両側ではショパン「夜想曲」、リスト「巡礼の年 第2年『イタリア』」から各2曲を選んで弾く。
2022年に母校の桐朋学園宗次ホールで行ったリサイタルで小井土のスクリャービンを初めて聴いたが、全音域を均質かつ正確に鳴らす打鍵の中に熱い共感や濃密な詩情を漂わせ、時に狂気のゾーンにまで踏み込む潔さに感心した記憶がある。25年2月の王子ホール初回ではシューマンの大作、ピアノ・ソナタ第1番に挑んだ。一つひとつの音にこだわり入念に仕上げる姿勢が、時に作品の巨大さを割り引いてしまう傾向を感じたが、前後して制作したセッション録音盤はスケールにも事欠かない仕上がりだった。さらに同年9月、松岡究指揮東京ユニバーサル・フィルと共演したベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番では堅固な構成力が前面に出る一方、音の強弱や旋律の歌わせ方がさらに自然となり、ドイツ音楽への適性を改めて示した。
今回のリサイタルはショパン、リストと19世紀ロマン派のピアニスト兼作曲家と、鍵盤音楽の歴史上その直後の後継世代に当たるスクリャービンを対比させ、ヴィルトゥオージティ(名技性)の視点から「ピアノ芸術」の変遷をたどる趣向。小井土の妙技が冴えるはずだ。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2026年3月号より)
小井土文哉(ピアノ) Vol.2 〜音楽宇宙を巡る旅〜
2026.3/20(金・祝)14:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
https://www.ojihall.jp

池田卓夫 Takuo Ikeda(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
1988年、日本経済新聞社フランクフルト支局長として、ベルリンの壁崩壊からドイツ統一までを現地より報道。1993年以降は文化部にて音楽担当の編集委員を長く務める。2018年に退職後、フリーランスの音楽ジャーナリストとして活動を開始。『音楽の友』『モーストリー・クラシック』等に記事や批評を執筆する他、演奏会プログラムやCD解説も手掛ける。コンサートやCDのプロデュース、司会・通訳、東京音楽コンクール、大阪国際音楽コンクールなどの審査員も務める。著書に『天国からの演奏家たち』(青林堂)がある。
https://www.iketakuhonpo.com

