いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2020

世界のアーティストが北陸に集う!

ゴールデン・ウィークの古都が、麗しき調べで輝きを増す。「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2020」は五輪イヤーにちなみ、「世界の音楽、広がる和」がテーマ。世界五大陸から集った名手たちが、数々の傑作で“競演”する。

 「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」は、2017年にスタート。今年は4月28日から5月5日の8日間、石川県立音楽堂を主会場として開催される。ほとんどのステージが、“聴きどころ”を凝縮した、通常の演奏会の約半分にあたる50分前後に設定。愛好家はもちろん、初心者でも気軽に楽しめる音楽祭だ。

 5月2日までのプレイベント期間には、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)や地元の音楽団体のステージのほか、ダウン症を乗り越えて、第一線の書家として活躍する金澤翔子による、ヴァイオリン演奏とのコラボレーション[公演番号:AK1]など多彩かつ注目度の高い公演を開催。そして、5月3日からの本公演期間中には、35のステージ(有料公演)が予定されている。

 当音楽祭の魅力の一つは、国際的に活躍する精鋭楽団と世界的マエストロとの、初共演を含めた組み合わせだ。今年の最注目は、“新たなるドゥダメル”と世界中から注目を浴びる、1996年生まれの新鋭マエストロ、ベネズエラ出身のエンルイス・モンテス・オリバー。ベトナム国立交響楽団と鬼才ピアニスト・山下洋輔の共演を得て、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」ほか、アメリカの名曲を披露する[C12]。

 イタリアの名門トスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団は、ドイツ出身の名匠ミヒャエル・バルケを指揮台に迎えて、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」[C11]や、イタリア・オペラの名旋律[C13]、ブラームスの交響曲第1番[C24]など多彩に。広上淳一でラヴェル「ボレロ」[C22]、沼尻竜典でイタリア・オペラ序曲集[C31]と、日本のマエストロとの共演もある。

 そして、古都にふさわしく、「邦楽新時代」も柱に。宮内庁式部職楽部の名手らによって組織され、雅楽の伝統を今に伝える東京楽所が音楽祭へ初登場し、管絃演奏や舞楽を披露する[H11]。また、ダンサーで振付家の勅使川原三郎は、地歌の富田清邦や弦楽四重奏団らと共演[H13]。さらに、グリーグ「ペール・ギュント」を題材に、能楽師の渡邊荀之助が舞う[H33]。

 18世紀から続くイギリスの名門・ロスチャイルド家の7代目で、ソプラノ歌手のシャーロット・ド・ロスチャイルドも登場。「日本人以上に、日本の心を表現する」と称賛される彼女が、テノールの秋川雅史と共に、「花は咲く」ほか古今の名曲の花束をプレゼントしてくれる[C14、A33]。

 表現者たちが様々な垣根を乗り越え、音楽の可能性を切り拓く試みも、今年の音楽祭の特徴。その日本代表こそが、OEKだ。まずは、広上の指揮、ステージにも登場する池辺晋一郎や国府弘子の編曲で、「イエスタデイ」「レット・イット・ビー」をはじめとするビートルズの名曲に挑戦[H12]。さらに、『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』など、久石譲によるスタジオジブリのアニメ音楽を、オリバー指揮で聴かせる[C21]。

 楽壇の未来を担う“ライジングスター”たちによる、みずみずしい調べが楽しめるのもこの音楽祭ならでは。昨年6月にチャイコフスキー国際コンクールで第2位となった俊英ピアニスト藤田真央は、ショパンの佳品を[A12]。そして、実力派ヴァイオリニストながらテレビのバラエティでも大活躍の木嶋真優は、チャイコフスキーの協奏曲を弾く[C23]。また、OEKで指揮研究員として研鑽を積み、世界へと羽ばたいた沖澤のどか。ベトナム国立響を振り、交響曲第7番ほかベートーヴェンの名曲を披露する[H24]。昨年、「左手のピアニストのための公開オーディション」で最優秀賞を受賞した児嶋顕一郎[A11]にも注目だ。もちろん、“左手のピアニスト”舘野泉[A11]やトランぺットのセルゲイ・ナカリャコフ[C32、A14]ら世界的ソリストも続々と登場する。

 「クロージング・コンサート」は、バルケ指揮のOEKが、スペインの巨匠ギタリスト、ペペ・ロメロをフィーチャーし、ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」を聴かせて掉尾を飾る[C34]。このほか期間中には、ベネズエラのヴォーカル・アンサンブル「ララ・ソモス」から、オスマン・サンコン率いるアフリカンフレンズ、アンデスやロシアの音楽まで……。例年にも増して、多彩な響きが金沢の街に溢れる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年3月号より)

【Information】
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2020
会期:[プレイベント]2020.4/28(火)~5/2(土) [本公演]5/3(日・祝)~5/5(火・祝)
会場:石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホール、北陸エリア(福井・石川・富山)
問:いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 実行委員会事務局076-232-8113 
2020.2/21(金)発売 
https://www.gargan.jp 
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。