【SACD】マーラー:交響曲第10番、ブルックナー:交響曲第9番/ノット&東響

 ノット&東響の第5作。未完の遺作を組み合わせた公演のライヴ録音である。マーラーの10番は、精妙な表情と緊張感を終始保ちながら進行。一筆書きの如きトーンで、じんわりとした感銘を与える。ブルックナーの9番は、引き締まった造型と精緻なバランスによって生み出された、驚くほど自然な演奏。第1楽章の絶妙な呼吸、第2楽章の峻烈な表現、第3楽章の種々の動きの明確さなど、特筆すべき点もあるが、大言壮語せずして雄弁な、感動的名演と言うに尽きるだろう。2曲の共通性を感慨深く再確認できるのも本盤の妙味。当コンビの充実を如実に示す1作だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年9月号より)

【information】
SACD『マーラー:交響曲第10番、ブルックナー:交響曲第9番/ノット&東響』

マーラー:交響曲第10番(ラッツ校訂版)
ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)

ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団

収録:2018年4月、ミューザ川崎シンフォニーホール&サントリーホール(ライヴ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00668(2枚組) ¥3800+税