●久しぶりの来日に期待
ーーコッシュさんはしばらく来日されてないと思うのですが、前回いらしたのはいつでしょうか?
コッシュ(以下K):15年前に、ズビン・メータ指揮のバイエルン州立歌劇場の来日公演の時に、東京文化会館で「フィガロの結婚」のケルビーノ役を歌ったのが唯一の来日です。それ以後も、「ばらの騎士」など何度かお話はあったのですが、日程等で実現しませんでした。ですから今回久しぶりに日本を訪れることができるのをたいへん楽しみにしています。日本のオーケストラと共演するのは初めてで、スダーン氏はもちろん存じ上げていますが、舞台でご一緒するのは初めてです。
日本に限らず、私はアジア全般の文化が大好きで、アジアの文化の奥深い美しさ、アジアの人々の生き方にとても魅了されています。私はカンボジアで以前からボランティア活動を続けており、子どもたちの教育や食料の支援活動をしていて、この夏も行きます。
ーーちなみに、お名前からコッシュさんはよくドイツ人と間違われることがあるそうですが、ご両親ともフランス人でいらっしゃいますよね?
K:はい、ヨーロッパでもよくドイツ人やオーストリア人に間違われますが(笑)、フランス生まれのフランス人です。パリ近郊で生まれ、長いことパリに住んでいましたが、今は家族で南西フランスに住んでいます。
ーー歌手になったきっかけは?
K:7歳でピアノを始め、11歳から学校の合唱団で歌うようになりました。13歳の時に子供のための新作オペラに出演したのが初めてのオペラ体験でした。その後、大学ではジャーナリズムなどを学んだのですが、やはり声楽を学びたいと思い直し、パリ・オペラ座のオペラ・スクールを経て、パリ音楽院で学びました。もともと私はとてもシャイで(笑)、最初からオペラ歌手になろうと思ったわけではないのですが、だんだんと舞台で別の人物を演じる楽しさに目覚めるようになり、オペラの道に進むことになりました。
ーーコッシュさんは、フランスものからシュトラウスやヴァーグナーまで幅広いタイプの役を歌われています。ご自分の声のタイプについてはどうお考えですか?
K:基本的にはリリックのメゾソプラノですが、ドラマティックな役柄を歌うこともあります。これまでいちばん多く舞台で演じたのは「ばらの騎士」のオクタヴィアン役で、たぶん130回以上歌っていると思います。今年もスカラ座で歌ったばかりです。
フランスものではマスネの「ウェルテル」のシャルロット役、「ミニョン」のタイトルロール、プーランクの「カルメル会修道女の対話」のマリー修道女長などを歌っています。「カルメン」は今まで躊躇していたのですが、来年メトでロール・デビューします。それから今後シカゴとパリでベルリオーズの「トロイアの人々」に初めて取り組みます。シカゴではディド役を、2年後のパリのオペラ座(バスティーユ)の創設30周年の記念公演では、カッサンドラ役を歌います。
ヴァーグナーのオペラは7〜8年前から歌ってきました。「トリスタンとイゾルデ」のブランゲーネ、「リング」のフリッカとヴァルトラウテ、「タンホイザー」のヴェヌスなどを歌っています。クンドリーもオファーはあったのですが、まだ早いと思ったので今のところお断りしていますが、いつか歌う機会があるかもしれません。
ーーもっとも影響を受けた歌手はどなたですか?
K:さまざまな歌手から影響を受けていて、とても全部は挙げられませんが、もっとも影響を受けたのはクリスタ・ルートヴィヒで、彼女には本当に感謝しています。私が最初に声楽を本格的に学び始めたころに、私の才能を信じて励ましてくれました。そのほかにもセナ・ユリナッチやグンドラ・ヤノヴィッツらからも多大な影響を受けました。
取材/文=後藤菜穂子
東京交響楽団創立70周年記念公演
ベルリオーズ:劇的物語《ファウストの劫罰》
コンサート形式(字幕付)
指揮:ユベール・スダーン
ファウスト:マイケル・スパイアーズ
メフィストフェレス:ミハイル・ペトレンコ
マルグリート:ソフィー・コッシュ ブランデル:北川辰彦
合唱:東響コーラス、東京少年少女合唱隊
東京交響楽団
第644回 定期演奏会
9/24(土) 18:00 サントリーホール
S¥10,000 A¥8,000 B¥6,000 C売切
第57回 川崎定期演奏会
9/25(日) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
S¥10,000 A¥8,000 B¥5,000 C¥4,000
問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp