大ベテラン・秋山和慶の指揮生活60周年の年頭を飾る2024年ニューイヤーコンサートのライブ録音。全体を通して、真摯かつ堅牢な音楽の中に柔軟性や活力が宿った、堂々たる演奏だ。「新世界より」の序奏から丁寧な造作とじっくりとした運びに耳を奪われる。この方向性は全曲にわたって続き、第2楽章のしみじみとした味わいも心に染みる。リズムの明確さや強弱のきめ細かさも際立っているが、大きく見れば全てがあくまで自然体。まさに円熟のタクトによる“大人の演奏”といった感がある。国宝的重鎮の貫禄の好演および覇気衰えぬ記録として傾聴すべき1枚。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年11月号より)
【information】
CD『ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 /秋山和慶&東響』
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/J.シュトラウスⅡ世:ワルツ「春の声」
秋山和慶(指揮)
東京交響楽団
収録:2024年1月、横浜みなとみらいホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4534 ¥3520(税込)