アッテルベリ「ドル交響曲」を“伝道師”の指揮で
舞台に出るのも自然体、解釈も力んだところがなく、オーケストラの持ち味をリラックスして引き出す広上淳一。ホールを元気にするパワーで、今日も日本全国を駆け巡っている。
2月の新日本フィル定期には、ちょっとひねった北欧プロで登場。メインに置かれた「ペール・ギュント」組曲は、誰もが知る名曲。放浪男のうらぶれていく生涯を描いたイプセンの原作に、若きグリーグが劇音楽をつけた。爽やかな朝の情景や母との死別を嘆いた「オーセの死」、不気味な音楽の代名詞「山の魔王の宮殿にて」など、後に編まれた2つの組曲はそのエッセンスを伝えている。
一方、冒頭におかれているのはスウェーデンのクルト・アッテルベリ(1887〜1974)の交響曲第6番。特許庁の職員として働く傍ら、9曲の交響曲に5作のオペラと、創作活動も旺盛に行った。第6番もわかりやすい旋律を軸としたロマン派風の作風が、北欧らしい清々しさや近代的なオーケストレーションで程よく彩られている。副題の「ドル交響曲」は、作曲コンクールでの優勝賞金から来ているそうだ。広上は一昨年もこの曲を広島で取り上げており、お気に入りのようだ。
この爽やかな両曲に挟まれているのが、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番。ソロの米元響子は1997年のパガニーニ・コンクールに史上最年少で入賞したのちも、内外のコンクールで賞を手にしている。着実に地歩を固め、現在はソリストとして活躍すると同時に、オランダの名門マーストリヒト音楽院で後進の指導に当たっている。広上ともすでに共演歴があり、こちらも爽快な風が吹き抜けそう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
#554定期演奏会
2/19(金)19:15、2/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp