INTERVIEW 中木健二(チェロ)――故郷の愛知・岡崎で“天下一”の室内楽音楽祭を!

©塩澤秀樹

 徳川家康の生地、愛知県岡崎市に音楽祭が誕生する。その名も「岡崎“天下一”室内楽音楽祭」! 同市出身のチェリスト中木健二が音楽監督となり、「岡崎市シビックセンター」を拠点として、「コンサートホール コロネット」での演奏会を中心に9月に開催される。

 「岡崎のホールは本当に最高です。木の温かみが伝わり、よく響くし細かい音も聴きとれる。弦楽器には特にぴったりの会場です。そしてすばらしいスタッフがいます。ホスピタリティをもって接してくださり、僕らが伝えたいことを完璧に共有してくれます。そのホールが2026年に開館25周年、さらに岡崎市制110周年の年でもあると知り、“その節目にぜひ音楽祭を!”と3年前に提案して、スタッフの皆さんのご尽力もあって実現することになりました」

 2013年には同ホールのレジデント・アンサンブルとして、中木とヴァイオリンの長原幸太、ヴィオラの鈴木康浩による弦楽トリオの「アンサンブル天下統一」を立ち上げ、21年からは彼らによるマスタークラス「アンサンブル・アカデミー」を毎年開催している。今年はこれらのメンバーを柱に4つの公演を用意する。

 「『天下統一』は最終公演でベートーヴェン作品9の3曲を一気に演奏します。また、3人でのソロコンサートにも挑戦します。僕自身が何度も2人のソロに感激してきて、それをぜひ岡崎で聴かせてほしいと思い、バッハと近現代の無伴奏作品を取り上げます。『アンサンブル・アカデミー』で勉強して演奏したメンバーも各地で活躍する“仲間”。彼らと一緒にオープニングコンサートと、0歳児も入場可能なファミリーコンサートでアンサンブル共演します。普段なかなか演奏会に来られない親御さんにも、子どもたちにも生の室内楽を体験してもらいたいですね」

 音楽祭名の「天下一」もこの熱意の表れとなる。

 「岡崎市が天下に誇るシビックセンターという意味で、全国から、将来的には世界から聴きに来てもらえる音楽祭を目指したい。個人的にも自分の出身地に多くの仲間たちが集まってくれて、こんなに嬉しいことはありません。あとは感動を分かち合える場にしたいと思います」

 フランス留学時の体験から「音楽祭」というものへの思いもあるという。

 「フランスには数えきれないほどの音楽祭が存在します。終演後、町の人と一緒にワインを飲んだりできるし、観光客や聴衆と一体になるのがすごく楽しくて、これを自分の地元でもできたらという思いがありました。岡崎市民にも楽しんでもらいたいし、遠くから来てくれた方々には音楽を通して町やホールを好きになってほしいです。うなぎとか美味しいものもたくさんあります!」

 徳川家康を「家康公」と呼ぶ岡崎出身の中木は、「岡崎発信で天下を取るというのは一見大げさですが、叶えた人がいる以上あやかりたいという気持ちはありますし、『天下一』の名に恥じぬ音楽祭にしたいと思います!」と気宇も大きい。多士済々のプレイヤーとリスナーが世界から集まる音楽祭に向けての第一歩。いざ岡崎へ!

取材・文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年7月号より)

岡崎“天下一”室内楽音楽祭
2026.9/3(木)~9/6(日) 岡崎市シビックセンター
問:岡崎市シビックセンター0564-72-5111
https://www.civic.okazaki.aichi.jp
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。