
室内楽で人気の編成といえばピアノと弦の五重奏と三重奏だろう。しかしその間にあるピアノ四重奏は、かつては聴ける機会が限定されていた。その状況を変え続けているのが、世界的な常設団体の登場。1995年創設のフォーレ四重奏団に続く世代にあたる、2007年結成のノトス・カルテットはその代表的な存在である。
ノトスQはベルリンで結成されてから最前線にあり続け、幻の作品となっていたバルトーク10代でのピアノ四重奏曲の楽譜を発見し、世界に広めた偉業も知られる。近年は来日を重ねて、シャープで高精度、かつ歌心あふれる熱い演奏で、トップクラスのパフォーマンスを聴かせている。
今春の来日は、2024年にチェロがベンジャミン・ライに交代してから初の日本公演となり、新メンバーでのノトスQを体験できる好機。3年前に続いての王子ホール公演で選ばれたのは、“ピアノ四重奏曲名曲集”というべきプログラム。モーツァルトの第2番変ホ長調、ブラームスの第3番ハ短調、シューマンの変ホ長調。いずれもこの編成の代表作、しかもすべてフラット(♭)3つの調をとる3曲で、響きの面でも筋の通る選曲だ。特にシューマンとブラームスはこのジャンルを語るには欠かせぬ作品で、チェロの歌から感動的な音楽が展開される両曲の緩徐楽章は屈指の名品。新チェリストのお披露目としてもこの上ない機会となる。来年には結成20年を迎えるノトスQの成熟した演奏で、ピアノ四重奏の深き魅力を堪能する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年2月号より)
ノトス・カルテット(ピアノ四重奏団)
2026.3/3(火)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
https://www.ojihall.jp
他公演
2026.2/28(土) 兵庫県立芸術文化センター(小)(0798-68-0255)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。
