20作目、満を持して臨むワーグナー――兵庫県立芸術文化センター「プロデュースオペラ」記者会見に佐渡裕らが登場!

 1月15日、兵庫県立芸術文化センターの目玉企画「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ」の記者会見が同ホール内で行われ、指揮を務める佐渡の他、キャストの妻屋秀和(バス)、清水徹太郎(テノール)が登壇した。

提供:兵庫県立芸術文化センター 撮影:飯島隆

 今年10月、節目となる開館20周年を迎える兵庫県立芸術文化センター。オープンから間もない2005年12月からスタート、今や同ホールの夏の風物詩として親しまれている「プロデュースオペラ」では、20作目にして初となるワーグナー作品、歌劇《さまよえるオランダ人》を取り上げる。演出のミヒャエル・テンメをはじめ、18年に同シリーズの《魔弾の射手》で壮大なメルヘンの世界を描き出したクリエイティブ・チームを再びドイツ・オーストリアから招聘。キャストは、ザルツブルク音楽祭などへの出演歴を持つヨーゼフ・ワーグナー(バリトン、オランダ人)ら欧州の檜舞台に立つ歌い手による組と、髙田智宏(バリトン、オランダ人)、妻屋(ダーラント)、清水(舵手)ほか国内外で活躍する日本人歌手の組による盤石の布陣だ。

 プッチーニをはじめとする“イタリアもの”を一つの軸に「プロデュースオペラ」の歩みを進める中で、ドイツ・オペラの最高峰にあるワーグナー作品にも取り組みたい、という思いを温めてきたという佐渡。《さまよえるオランダ人》を選んだ理由として、上演時間の短さや世界観への入り込みやすさとともに、次のような物語のテーマを挙げた。
「それは、『愛による救済』です。オペラというものは大抵“死”が付きまといますが、この作品では恨みで人が死んでいくのではなく、愛ゆえに捧げられた命によって呪われたオランダ人が救済される。そうした“救い”というテーマが、阪神・淡路大震災からの『心の復興』を原点とするこの劇場の20周年を飾るのにふさわしいと考えました」

佐渡裕
提供:兵庫県立芸術文化センター 撮影:飯島隆

 前述の《魔弾の射手》、一昨年の《ドン・ジョヴァンニ》に続いて三度目の「プロデュースオペラ」出演となる妻屋。今回演じるダーラントは、自身にとっても思い入れの深い役であるという。
「僕がドイツで活動していた時に、初めてワーグナー作品で主役級を射止めたのがこの役だったのです。ダーラントは、先ほどマエストロが仰った『愛による救済』には一切関わらない(笑)、お金や宝石に並々ならぬ執着を示す“俗物的”な人物。ですが、それゆえにオランダ人とゼンタの“救い”の物語にアクセントを与える役割を果たしますので、そのコントラストをうまく描いていきたいと思います」

妻屋秀和
提供:兵庫県立芸術文化センター 撮影:飯島隆

 神戸市出身の清水は、2007年の《魔笛》にひょうごプロデュースオペラ合唱団のメンバーとして参加、以降ソリストとしても同シリーズを支えてきた歌い手の一人だ。妻屋とは2016年、びわ湖ホールと神奈川県民ホールで上演された《さまよえるオランダ人》で今回と同じ役で共演しており、その際の経験が自身の中で深く印象に残っているという。
「一幕の最初、居眠りしてしまった舵手がダーラントに怒鳴られるシーンで妻屋さんの声を間近で浴びて、『世の中に声だけでこんなに心を震わせることができる人がいるのか』と衝撃を受けたのです。もう一度この作品でご一緒できる機会があれば…と考えていたので、今回、開館20周年という節目にそれが叶い、奇跡のようなご縁に胸を高鳴らせています」

清水徹太郎
提供:兵庫県立芸術文化センター 撮影:飯島隆

 会見を通して、オペラは歌い手、舞台演出、オーケストラ、そして劇場のスタッフによる「チーム戦」であると語った佐渡。節目の年に集結したメンバーが一丸となって挑むワーグナー作品に期待が高まる。

文:編集部


【Information】

兵庫県立芸術文化センター開館20周年記念公演
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2025
ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》
(全3幕/ドイツ語上演・日本語字幕付/新制作)

2025.7/19(土)、7/20(日)、7/21(月・祝)、7/23(水)、7/24(木)、7/26(土)、7/27(日)
各日14:00 兵庫県立芸術文化センター

指揮:佐渡裕
演出:ミヒャエル・テンメ
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

出演
オランダ人:ヨーゼフ・ワーグナー★ 髙田智宏☆
ダーラント:ルニ・ブラッタベルク★ 妻屋秀和☆
ゼンタ:シネイド・キャンベル=ウォレス★ 田崎尚美☆
エリック:ロバート・ワトソン★ 宮里直樹☆
マリー:ステファニー・ハウツィール★ 塩崎めぐみ☆
舵手:鈴木准★ 清水徹太郎☆

合唱:ひょうごプロデュースオペラ合唱団

★7/19、7/21、7/24、7/27 ☆7/20、7/23、7/26

2/16(日)チケット発売
問:芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255

兵庫県立芸術文化センター
https://www.gcenter-hyogo.jp/flying-dutchman/