今年の“顔”2人に焦点をあてた意欲的なプログラム
大野和士&東京都交響楽団が、今年生誕150年にあたる二人の作曲家の作品を中心にプログラムを組んだ。セルゲイ・ラフマニノフとマックス・レーガー。ラフマニノフの作品は様々なオーケストラやピアニストが彼のアニバーサリーを記念して演奏しているが、そういう機会に乏しかったレーガーにスポットライトが当てられるのはうれしい。
早くから音楽的才能を示したものの、43歳の若さで急逝したレーガーの作品の中では最も知られている「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」が、この11月から12月にかけて、ペトレンコ&ベルリン・フィルやルイージ&NHK交響楽団によって取り上げられるが、大野&都響が演奏するのはもう一つの代表作「ベックリンによる4つの音詩」である。スイスの画家、アルノルト・ベックリンの絵画からのインスピレーションに基づく作品で、〈ヴァイオリンを弾く隠者〉〈波間の戯れ〉〈死の島〉〈バッカナール〉の4曲からなる。「死の島」は同じ絵画に基づいてラフマニノフも管弦楽作品を残している。一方、独奏にニコライ・ルガンスキーを招いてのラフマニノフは、よく弾かれるピアノ協奏曲第2番や第3番ではなく、第1番が取り上げられる点に注目。
そして、演奏会後半には、シューマンの交響曲第4番が演奏される。このコンビにとっては2020年9月の第3番「ライン」に続いてのシューマンの交響曲。意外と取り上げてこなかったレパートリーだけに興味津々だ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年12月号より)
第988回 定期演奏会Aシリーズ
2023.12/7(木)19:00 東京文化会館
第989回 定期演奏会Cシリーズ
12/8(金)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp