BCJで活躍中のソプラノが紡ぐバッハと英米歌曲
東京オペラシティの『B→C』(ビー・トゥー・シー)にソプラノの松井亜希が登場。20世紀の英米歌曲がバッハと新曲委嘱作品を結ぶ、斬新でハイセンスなプログラムでのぞむ。凛と澄んだ美しい声。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の若手ソリストとして活躍する彼女だが、本格的にバッハを歌い始めたのは、東京芸大大学院時代にBCJに参加するようになってからなのだそう。
「BCJで歌いながら勉強してきた感じです。バッハ演奏の第一線で活躍する世界的なソリストたちを間近で聴いて、音楽的な表現はもちろん、舞台人としての姿勢まで、本当にたくさんのことを学びました」
学生時代からの専門はおもに歌曲だった。大学院ではプーランクの研究で博士号を取得する一方で、並行して熱心に学んできたのが英米歌曲。
「当時、それまで芸大のカリキュラムにはなかった20世紀の英米歌曲を、師の朝倉蒼生(あさくら・たみ)先生が初めて開設したクラスで勉強できるようになりました。英語は歌う言葉としてはかなり難しいのですが、それをどうクリアするかという実践や、テキストの詩人についても勉強する、とても有意義な時間でした」
今回は、ブリテンやクィルター、V・ウィリアムズ、ナッセン、カーターといった近現代作品が中心の曲目。
「英米歌曲をまとめて聴く機会は少ないので、たぶん新鮮に感じられると思います。20世紀の作品が多くなるのですが、バッハからいきなり現代まで飛んでしまうのは不自然かと思い、ブリテンが編曲したパーセルの歌曲をはさんで、ピアノ伴奏でモダンな響きのするバロック音楽が、18世紀と現代のかけはしになるように意図してみました」
鈴木優人と渋谷由香の、新作初演が2曲もあるのも意欲的。
「二人とも芸大時代からの友人です。渋谷さんにはピアノとソプラノ、鈴木くんにはアカペラ作品をお願いしましたが、中身についてはそれぞれ完全にお任せです。どんな作品を書いてくれるのか、ワクワクしています。現代曲の譜読みは、私の場合、絶対音感ではなく、それぞれの音が自分の身体の中で的確に響くあるポイントを見つけられるまで練習します。その作業はナッセンの『ホイットマン・セッティングス』で特に必要でした。大変な曲です! 自分で選んだんですけどね(笑)」
そして「とっておきの名曲」というのがバッハのカンタータ120番のアリア。
「最高に美しい曲です! でも、個々の曲というよりは、リサイタル全体を、有機的につながった一つの絵画のように、最後まで一緒に楽しんでいただけたらうれしいです」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)
東京オペラシティ リサイタルシリーズ『B→C』
松井亜希 ソプラノ リサイタル
12/16(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp