戦後日本の音楽史の礎を築いた作曲家の軌跡をたどる
平尾貴四男は慶應義塾大学を卒業後、パリに渡りモダンな作風を身に付け帰国。第二次大戦が終わると国立音大に奉職、安部幸明らと作曲グループ「地人会」を結成して、教育・創作の両面において旺盛な活動を開始した。その音楽は日本風のテイストを生かしつつも精妙な感性に支えられており、室内楽の分野を中心にきらりと光る作品を残したが、創作の充実期に入ってきた1953年、46歳にして世を去った。
平尾の没後70年に、ピアニストである娘・平尾はるなの企画・構成による記念演奏会が開かれる。25分以上を要する大作ヴァイオリン・ソナタ、ドビュッシーやスクリャービンのセンスを独自に消化したピアノ・ソナタ、日本的な節回しを瀟洒なハーモニーで彩る木管五重奏曲や弦と管による八重奏「奇想組曲」といった心境の深まりを反映する代表作を、若い世代を中心とした演奏家により味わう。また今回注目すべきは、戦時中に書かれた代表的交響作品「砧」の4手連弾版だ。平尾の管弦楽曲が演奏される機会は限られているだけに貴重である。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年10月号より)
2023.10/18(水)18:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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