『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年6月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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今年の9月の公演情報掲載は難物だ。コロナの影響が薄まって9月からの新シーズン予定が昨年までより順調に発表されていること、一方、夏の音楽祭で発表に遅れがあり、後追い掲載が9月にずれ込んだもの、これらが絡み合って、今月号に載せるべき公演データが完全に飽和状態となったからだ。そのため、重要な公演であってもやむなく割愛せざるを得なかったものが多数ある。詳細データは、ぜひともホームページでの再確認をお願いしたい。
まずはその音楽祭から。9月開始のものとして「バイロイト・バロック」「パルマ・ヴェルディ」などは関心を持つ特定マニアにとって極めて重要な音楽祭。夏の「バイロイト音楽祭」が終わった後に市内の辺境伯歌劇場(世界遺産)で行われるもう一つの「バイロイト音楽祭」(バロック)は、今年も大変珍しいポルポラの「オーリードのイフィジェニー」(ルセ指揮)を中心とした魅力的な古楽公演が並ぶ。「パルマ」の方はヴェルディの生地ブッセートを含んだパルマ地域の音楽祭で、「マクベス」「仮面舞踏会」「レニャーノの戦い」など、パルマで生まれた大指揮者トスカニーニの名を冠するオーケストラやボローニャ歌劇場管の演奏で、ヴェルディ尽くしの公演が楽しめる。
「リンツ国際ブルックナー・フェスティバル」は、さすがブルックナー生誕200年のメモリアル・イヤーだけあって、ウェルザー=メスト、サヴァール、ミンコフスキ、ティーレマン、ヘンゲルブロックといった有名指揮者陣のブルックナーが勢揃い。「ボン・ベートーヴェン音楽祭」ではヤーコプス指揮ビーロック・オーケストラのベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」、ムニエ指揮フライブルク・バロック管のバッハ「ロ短調ミサ」なども聴きものだが、この音楽祭でもプラハで開かれる「ドヴォルザーク・プラハ国際音楽祭」でも精力的な活躍を見せるのは指揮者のフルシャ。特に後者では、バンベルク響とチェコ・フィル両方の指揮台に立つ。ちなみに、この音楽祭では、ティーレマン=ウィーン・フィル、メッツマッハー=チェコ・フィルの公演に加え、ピアノの藤田真央やアルゲリッチも登場する。
8月までに始まっていた音楽祭の中では「ブレーメン音楽祭」での藤田真央、ヤーコプス、ミンコフスキ、レヴィット(ピアノ)らがやはり要注目。また、「ムジークフェスト・ベルリン」ではラトル、ペトレンコ、ティーレマン、「グラーフェネック音楽祭」ではシャイー、ティーレマン、ガッティなどの人気指揮者が今年も顔を揃える。ピアノの音楽祭である「ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル」ではこれまた藤田真央やソコロフが要注目。藤田真央は、もはや世界の舞台で名前を見ない月がないほど、日本の若手ピアニストのトップを突っ走っている。スイスの「ルツェルン音楽祭」やイギリスの「プロムス」ももちろん豪華な指揮者陣、演奏者陣であることは言うを俟たない。ただ、ユニークなオペラ公演などで毎年見落とせなかった「ルール・トリエンナーレ」がどうもクラシック路線から外れてしまったのは非常に残念だ。
音楽祭の話題ばかりになってしまったが、通常公演では、ベルリン・フィルのシーズン開幕公演であるペトレンコ指揮のブルックナー交響曲第5番、ウィーン国立歌劇場の新シーズン初プレミエ作品、ヴェルディ「ドン・カルロ」の4幕イタリア語版、ハンブルク州立歌劇場のオルフ三部作(ナガノ指揮)、ドレスデン・ゼンパーオーパーのボーイト「メフィストーフェレ」(バッティストーニ指揮)、ソヒエフ指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(サン=サーンスの交響曲第3番他)、同じくソヒエフ指揮パリ・オペラ座管のショスタコーヴィチ交響曲第4番、ラトル=バイエルン放送響のバッハ「マタイ受難曲」、シャイー=ミラノ・スカラ座管のシェーンベルク「グレの歌」、モネ劇場で演出がオーディに代わったワーグナー「ジークフリート」などがどれも要注目公演だ。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)