スペイン音楽が彩る今年の「せんくら」
秋の仙台に多くの音楽家が集結し、3日間の饗宴を開催。仙台クラシックフェスティバル、通称「せんくら」は今年で9回目を迎える。その第1回となった2006年、朝一番のコンサートへ登場したのがギタリストの福田進一だ。それ以来、ほぼ皆勤で登場し、多彩なプログラムによる曲を演奏。「せんくら」以前からも仙台でコンサートをすることは多かったというが、ますます幅広いファンが増えたという。
「『せんくら』自体のファンが増えていますし、東北各県や東京などからも泊まりがけでいらっしゃる方が多くなったと実感しています。中にはクラシック・ギターのコンサートを初めて聴いたという方もいらっしゃいますが、これはクラシックという大きな枠の中にギターを入れてもらえる『せんくら』ならではの反応であり、とてもうれしいこと。国内外のさまざまな音楽祭へ参加していますが、3日間で街を網羅するような規模のものは貴重でしょうね。しかも集まる音楽家の水準も高いですし、日本ならではの丁寧に作られたフェスティバルだなと実感しています」
今年は3回のコンサートに出演予定。昨年から続く「日本・スペイン交流400周年」を祝う一環として、また支倉常長をはじめとする仙台藩の慶長遣欧使節がスペインへ到着して400年となることもあり、福田もスペイン音楽のプログラムを並べている。
「ギタリストにとってスペインの名曲は振り出しに戻るような新鮮さがありますし、『アルハンブラの思い出』をはじめ、クラシック・ギターは初めてだという方でも知っている曲があると思います。グラナドスの『詩的ワルツ集』などはスペイン本国でも全曲演奏されることが少ないようですから、ギター・ファンの方にも注目していただけるでしょう。チェロの長谷川陽子さんとは『せんくら』でも何度か共演していますけれど、今回は初めて演奏するパガニーニの『モーゼ幻想曲』も含め、こんな組み合わせのデュオや曲もあるんですよ、とご紹介したいですね。出演者それぞれのファン同士が交流をもっているとも聞きますし、それもまたこのフェスティバルならではでしょう」
コンサート後のサイン会などで聴衆と言葉を交わすことも多いが、その熱心さには圧倒されるという。
「聴き手も増えていると同時に、皆さんの耳が肥えてきたり知識が増えているなと思えます。震災以降もまた盛り上がりを見せていますし、継続してきたことが形になっているのでしょう。ですから素晴らしい演奏をお届けすると同時に、もっといろいろな音楽の種類や楽しみ方を提示したり、若い世代の音楽家に『せんくら』の素晴らしさを伝えたいですね。なにしろ仙台は食べ物もお酒もおいしいので、音楽家同士の飲み会も同窓会みたいで楽しいんです。その雰囲気を音楽を通じてお客様へ届けることができるのは、食文化のレべルが高いこの街ならではかもしれません」
さて今年の仙台は、どんな名演と歓声に彩られるのだろうか。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
第9回 仙台クラシックフェスティバル2014
10/3(金)、10/4(土)、10/5(日)
日立システムズホール仙台、イズミティ21、エル・パーク仙台、太白区文化センター 他
福田進一 出演公演
10/3(金)12:00 イズミティ21(小)
10/3(金)17:45 日立システムズホール仙台シアターホール
10/4(土)14:45 イズミティ21
問:せんくら事務局 022-727-1872
フェスティバルの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://sencla.com