絆も深き名手たちがピアノ五重奏の最高傑作を紡ぐ
日本を代表するピアニストが腕を振るう「小山実稚恵の室内楽」の第5回が、アルティ弦楽四重奏団と池松宏(コントラバス)を迎えて開催される。このところの小山は充実一途。2019年からのシリーズ『ベートーヴェン、そして…』やベートーヴェンの後期ソナタのCD等で披露している演奏は、自然体にして深く、繊細なニュアンスと情感に溢れている。これまで室内楽奏者としても鋭敏な感性と多彩なテクニックで音楽を輝かせてきただけに、充実の今聴かせるアンサンブルへの期待は限りなく大きい。
アルティ弦楽四重奏団は、豊嶋泰嗣、矢部達哉(ともにヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、上村昇(チェロ)と実力者揃い。1998年の結成以来、名手4人の個性を絶妙に調和させた緻密かつ表情豊かな演奏で評価を高めてきた。2016年にブラームスなどのピアノ五重奏曲で共演し、本シリーズ誕生のきっかけを生み出すなど、小山との相性も抜群だ。池松は、都響の首席奏者を務めるほか様々な楽団で活躍する日本屈指のコントラバス奏者。小山も「一音一音に魂が宿っている」と賞賛を惜しまない。
今回のコラボゆかりのブラームス作品と、コントラバス入りのシューベルト「ます」が並ぶプログラムは、形態の異なる五重奏曲の看板曲を一挙に堪能できる極め付けの内容。ともにピアノがソリスティックな活躍をするので小山の妙技も満喫できるし、丁々発止のやりとりや美しく融合するアンサンブルも存分に味わえる。深い共感と信頼で結ばれた演奏家たちが奏でる、音楽への悦びに溢れた本公演を、ぜひ生体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年12月号より)
2021.12/4(土)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net