フォーレ四重奏団

結成25周年に組んだ特別なプログラム

(c)Mat Hennek

 フォーレ四重奏団がトッパンホールに帰ってくる。常設のピアノ四重奏団は世界的にも珍しいが、1995年にドイツのカールスルーエ音楽大学で学んだメンバーにより結成されたフォーレ四重奏団は、昨年結成25周年を迎えた。かつてマルタ・アルゲリッチはフォーレ四重奏団について「彼らの演奏を聴いた人はだれもがもう一度聴きたくなる」と言ったが、その賛辞の通り、くりかえし聴きたくなる魅力を彼らが持っているからこその25周年だろう。

 12月9日の公演のために彼らが用意したプログラムは、フォーレとブラームスの作品を組み合わせたもの。といっても、ひとひねりがあって、まずはフォーレの歌曲から「ゆりかご」「われらの愛」「月の光」が、D.ツェルナー編のピアノ四重奏版で演奏される。なるほど、作曲者の名を冠するピアノ四重奏団にとって、フォーレ作品のレパートリーの拡充は必須かもしれない。歌曲からピアノ四重奏への編曲の妙も楽しめる。

 これに続いて演奏されるのがフォーレのピアノ四重奏曲第2番、そしてブラームスのピアノ四重奏曲第3番。19世紀後半にフランスとドイツでそれぞれ室内楽の傑作を残した大家による重厚な傑作を味わうことができる。緊密なアンサンブルが作品に込められた豊かなパッションと濃厚なロマンを引き出してくれることだろう。

 また、12月7日の公演ではドヴォルザークのピアノ四重奏曲第2番とムソルグスキー(グルズマン&モメルツ編)の「展覧会の絵」が披露される。ピアノ四重奏版の「展覧会の絵」があるとは驚きだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年12月号より)

2021.12/9(木)19:00 トッパンホール【チケット完売】
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com

他公演
2021.12/7(火) トッパンホール (パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831)