英国の俊英が好調の楽団に新風を吹き込む
このところの東京シティ・フィルは、7年目を迎えた常任指揮者・高関健のもと、機能的な充実を極めると同時に、表現意欲溢れる演奏で聴く者に多大な感銘を与えている。しかも客演陣の指揮でも各々の個性を反映した好演を展開しているので、毎回が見逃せない。
そこで着目したいのがロリー・マクドナルドが振る11月の定期演奏会だ。1980年スコットランドに生まれ、デイヴィッド・ジンマンやアントニオ・パッパーノの薫陶を受けた彼は、才能際立つ俊英として急速に頭角を現してきた逸材。英国や北欧を主軸とした多数の著名楽団の指揮に加えて、英国ロイヤル・オペラをはじめとする欧米有力歌劇場での実績が光っている。名古屋フィルや神奈川フィルへの客演でも好評を博しているが、シティ・フィルとの初共演でいかなる音楽を聴かせるか? そのダイナミックでドラマティックな表現力に期待が集まる。
地元の佳品と英国指揮者の十八番シベリウスの名品を揃えたプログラムも実力発揮に相応しい。まず20世紀英国の大家ティペットの「チャールズ皇太子の誕生日のための組曲」は明朗かつ気品漂う音楽で、生演奏は実に貴重だ。次のヴォーン・ウィリアムズ「揚げひばり」は、独奏ヴァイオリンがひばりを表現する佳き風景画。ここは近年上昇顕著な南紫音が叙情的なソロで魅了する。そしてシベリウスの交響詩「4つの伝説曲」。フィンランドの国民的叙事詩に登場する英雄を描いた北欧的なロマン溢れるこの名作では、オペラで培ったマクドナルドの巧みな語り口が生きるに違いない。
久々に登場する外国人指揮者がもたらす好調シティ・フィルの新鮮な音楽に注目!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年10月号より)
第346回 定期演奏会
2021.11/12(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp