鮫島有美子(ソプラノ)

天皇陛下御作詞、皇后陛下御作曲の歌「歌声の響」との出会い

©BSフジ『堺でございます』
©BSフジ『堺でございます』

 ヨーロッパを拠点に長年世界的な活躍を続けてきたソプラノ歌手の鮫島有美子が、2014年に帰国。そのきっかけは、天皇陛下が沖縄を想って御作詞、皇后陛下が御作曲の歌「歌声の響」との出会いだった。以来、本作の普及に尽力してきた彼女の願いが、15年11月にCD付ブックとして形になった。
「この歌に傾倒する中で、両陛下のお心をより深く知りたいという思いが強くなって。日本に戻ってじっくりと勉強することにしました」
 歌詞には、両陛下が沖縄を初訪問された1975年の体験が歌われている。
「名護市の国立ハンセン病研究所・愛楽園を訪ねられた両陛下がお帰りの際、在園者から、沖縄の船出歌で『誠にめでたい』を意味する『だんじょかれよし』の大合唱が沸き起こりました。天皇陛下はこの時の印象を、沖縄周辺の島々に伝わる琉歌(8・8・8・6の定型詩)の形式で作詩。後に『この歌のための曲が欲しい』という在園者の希望が高まり、それを聞かれた陛下が、音楽に造詣の深い皇后陛下に作曲を依頼されたそうです」
 詩と歌それぞれの魅力を、鮫島は次のように語る。
「琉歌は簡単に詠めるものではなく、天皇陛下はそのために沖縄の言葉や歴史を独学で学ばれました。皇后陛下も沖縄の音楽を色々調べられたそうです。現地の方は、『皇后さまがこんなにも沖縄風の旋律を書かれるとは』と驚いたそうです」
 今回の録音のベースは、皇后陛下が作られたメロディに、様々な要素が加わり、新たに前奏や伴奏などをつけたバージョン。それに鮫島がドイツ語の詩を加えるなど、さらにアレンジを施した。
「これまでに沖縄を10回も訪問されている両陛下。どうしたらおふたりの心に添えるかと日々試行錯誤を重ねました。その結果、色々なアイディアが不思議な力となって湧いてきて、沖縄の三線やヴァイオリンのソロ、アカペラや、詩の朗読といったパーツとなり、最終的には6分40秒もの長さの曲になったのです」
 出来るだけ多くの人に、この御作品を聴いて欲しいと、普及推進委員会も立ち上げた。
 「この歌が日本中に広まるよう、NHKの紅白歌合戦でも取りあげていただければ(笑)」と、今後の展望を語る鮫島。彼女がこの歌と両陛下に寄せる深い愛は、曲中で自ら朗唱するドイツ語の詩にもよく表れている。
「シューベルトの歌曲『音楽に寄せて』の詩は、両陛下が沖縄の方々に寄せるお心にふさわしい気がして選びました」
 今年は更に、皇后陛下御作曲の「おもひ子」、「星の王子の」という2作品のCD化に取り組んでいるそうだ。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)

Book
『天皇陛下 御作詞 皇后陛下 御作曲 歌声の響 CD付』
鮫島有美子(歌・朗読)
宮内庁(監修)
朝日新聞出版(編)
朝日新聞出版
¥1100+税