アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

キーワードは“追悼”と“伝説”

アラン・ギルバート ©Pascal Perich
アラン・ギルバート ©Pascal Perich

2011年7月の初共演でセンセーションを巻き起こしたアラン・ギルバートが、ふたたび都響の指揮台に帰ってくる。ニューヨーク・フィル音楽監督を務めるアラン・ギルバートが日本のオーケストラを指揮するというだけでも話題性は十分だが、さらに興味深いのが考え抜かれたプログラムだ。
武満徹の「トゥイル・バイ・トワイライト-モートン・フェルドマンの追憶に-」、シベリウスの交響詩「エン・サガ(伝説)」、そしてワーグナー(ギルバート編)の「指環の旅〜楽劇《ニーベルングの指環》より」。時代も国も異なる3曲を並べながら、あたかも一冊の長篇小説を紐解くような、相互の関連性を持ったプログラムとなっている。
キーワードとなるのは“追悼”と“伝説”。武満徹の作品は同時代のアメリカの作曲家フェルドマンの死を悼む音楽であると同時に、「トゥイル・バイ・トワイライト(=黄昏の綾織り)」として、後半の「指環」での「神々の黄昏」を想起させる。シベリウスの「エン・サガ」が題材とする伝説は明らかではないが、その音楽は英雄の闘争とその悲劇的運命を表現する。そしてワーグナーの超大作をオーケストラ作品として再構成した「指環の旅」では、北欧神話を題材に神と英雄、権力と愛の物語が壮大なスケールで描かれる。
ワーグナーの長大な楽劇《ニーベルングの指環》をオーケストラ作品として演奏する試みはこれまでにもいくつかあった。アラン・ギルバートは、どの場面を選び、どう組み立てるのか。その手腕にも注目したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

第801回 定期演奏会Bシリーズ
2016.1/26(火)19:00 サントリーホール
都響スペシャル
2016/1/27(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:都響ガイド03-3822-0727
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