尾高忠明(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

十八番のイギリスものとシューベルトの高貴な味わい


 今年3月に札響音楽監督の任期を終えた尾高忠明の在京オーケストラへの出演が続いている。桂冠指揮者などの肩書きを持つ東京フィル、N響、読響へ登場したほか、新日本フィルや東京シティ・フィルの定期演奏会に客演し、得意のイギリス音楽やシベリウスの作品を披露した。この12月には約5年ぶりに日本フィルの東京定期演奏会を振り、日本フィルの団員をソリストに立てて20世紀イギリスの協奏曲を取り上げる。
 BBCウェールズ・ナショナル管の桂冠指揮者を務めるなどイギリスでのキャリアが長い尾高は、イギリス音楽の紹介者としても知られる。フィンジの「クラリネットと弦楽のための協奏曲」では同団首席奏者の伊藤寛隆が独奏を務める。1949年に完成されたこの協奏曲は演奏の機会が多くないがロマンティックでたいへんに魅力的な作品である。ヴォーン=ウィリアムズの「バス・テューバと管弦楽のための協奏曲」でソロを担うのは同団の柳生和大。テューバ協奏曲のなかでは最も著名といえるこの作品ではテューバの歌う楽器としての魅力が満喫できる。
 後半にはシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」が置かれた。尾高は若き日にウィーン国立音楽大学でハンス・スワロフスキーに師事するなど、ウィーンとのつながりも深く、シューベルトの音楽にも特別の愛着を寄せる。円熟味を増すマエストロ尾高と近年好調の日本フィルとの共演がとても楽しみである。
文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

第676回 東京定期演奏会
12/11(金)19:00、12/12(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp