安田芙充央(作曲/ピアノ)

音楽で巡る“今のアジア”

©Susie Knoll
©Susie Knoll

 シュテファン・ウィンターが主宰するドイツの“こだわり”CDレーベル、WINTER&WINTERから10枚のリーダー作をリリースし、ジャンルの壁を超越したコンポーザー・ピアニストとして欧州を中心に活躍中の安田芙充央。今年は、NHK-BSプレミアムのザ・プレミアム『井浦新 アジアハイウェイを行く』でサントラを担当し話題を集めている。
「総延長で13万キロメートルにも及ぶアジアハイウェイが貫く広大な地域を紹介する番組で、既に放送されたシーズン1(全3集)では、欧州寄りのトルコやジョージアからイランと中央アジアをまわりました。11月からのシーズン2では東南アジアを巡る旅を放映予定です。作曲にあたっては、エネルギッシュな“今のアジア”を表現し、特定の地域に限定されない汎用性を持った音楽を目指しました。また、案内役である俳優の井浦新さんも含めて、旅する人の心象風景も描きたかった」
 とりわけ、主要テーマや挿入曲など様々なナンバーで起用している女性ヴォーカリストAkimuse(アキミューズ)の存在感にも耳を惹かれる。
「“aki語”という独特な表現方法で言葉にならない微妙なニュアンスを伝えるのです。彼女は即興でメロディもどんどん作れるんですが、それはジャズのイディオムとも違うし、ただ声を楽器のように駆使しているだけでもない。“aki語”はスキャットというよりは、やはり言語であり、文法を越えて情感を伝えるものだと思います。彼女には、フランス・中国合作の映画『Before the Full Moon Returns』のテーマにも参加してもらったのですが、とても好評でした」
 チェロを使ったポップでメロウな楽曲から、ベースが参加するジャジーなナンバーまでサントラは実に多彩。自身でもピアノに加えて鍵盤ハーモニカを演奏し、素敵なアクセントを添えている。
「ジャズベース界の巨匠・井野信義さんの参加している曲はどれもワンテイク、一発録り。他にも第一線で活躍する演奏家の皆さんの協力を得て、それぞれの個性が楽曲の味になっていますね」
 11月には渋谷の人気クラブ「JZ Brat」で発売記念ライヴを開催。Akimuseをはじめ、選りすぐりのメンバーが集結する。
「日本打楽器界の第一人者・細谷一郎さん、コントラバス界の重鎮・齋藤順さん、日本ではなかなかお目にかかれないターキッシュ・クラリネットを演奏する鈴木直樹さんらによる豪華な布陣です。でも単にサントラ盤と一緒ではなく、チャレンジングな楽曲も演奏予定。リラックスした雰囲気のなかで、イマジネーションを搔きたてる壮大な音楽の旅を楽しんでもらえたら嬉しいです」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

CD『アジアに吹く風』発売記念
安田芙充央コンサート
featuring Akimuse
11/17(火)19:30 20:45 JZ Brat
問:JZ Brat 03-5728-0168 (入れ替えなし)
http://www.jzbrat.com

CD『アジアに吹く風〜安田芙充央サウンドトラック集』
Roving Spirits
RKCJ-2058
¥2500+税