サントリー芸術財団コンサート 作曲家の個展2015 原田敬子

ヴェールを脱ぐ原田敬子の“いま”


 日本には中堅から若手まで優れた作曲家がたくさんいるのに、彼らの管弦楽の新作を聴く機会がずいぶんと減ってしまっている。危惧すべき事態である。その“いま、聴きたい作曲家”の筆頭が原田敬子だろう。演奏家の身体性にまで切り込む鋭い感性で、同世代の中でも頭一つ抜けた才能を感じさせた。2000年代まで大作を精力的に発表していたのだが、近年は小編成の作品や他分野とのコラボ作品が多いようだ。
 と思ったら、今年のサントリー芸術財団の『作曲家の個展』が原田敬子特集ではないか。これは嬉しい。しかも上演4曲のうち、2曲が世界初演作。愛好家の渇望を癒す企画である。
 前半の2曲、芥川作曲賞受賞作で3人のソリストがオーケストラと対峙する「響きあう隔たりⅢ」(2000〜01)と、その受賞記念委嘱作として書かれた「第3の聴こえない耳Ⅲ」(03)では、演奏行為そのものを創造的に構築する若き原田のスタイルが感じ取れるはずだ。13年から2年越しで取り組んでいるピアノ協奏曲、そして今回の演奏会のために委嘱された作品で、原田の“いま”がヴェールを脱ぐ。
 ドイツの現代音楽演奏集団アンサンブル・モデルンから、今回のために7名の奏者が来日。彼らはすでに原田作品を手掛けている手練れたちだ。中川賢一指揮桐朋学園オーケストラをバックに、原田の最新CD『F.フラグメンツ』でスリリングな競演をみせたシュテファン・フッソング(アコーディオン)と廻由美子(ピアノ)、さらに稲垣聡(プリペアド・ピアノ)、加藤訓子(打楽器)といったスペシャリストが顔を揃え、通常の4倍のリハーサルを行って臨む。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

10/27(火)19:00 サントリーホール
※18:20より原田敬子によるプレコンサート・トークあり
問:東京コンサーツ03-3226-9755
http://www.tokyo-concerts.co.jp