中野翔太(ピアノ)

研ぎ澄まされた感性が編む物語

©Yuuji
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 15歳でニューヨークに渡り、ジュリアード音楽院プレ・カレッジ、同大学、大学院で学んだ中野翔太。これまで、ウィーン・フィルやN響など数々の名門オーケストラや名指揮者と共演を重ねてきた実力派だ。クラシックのマスターピースに加えてジャズ風の作品や現代音楽もごく自然に手の内に入れ、幅広いレパートリーによる演奏活動を行っている。
 今年のリサイタルで用意されているのは、そんな中野が知性と豊かな想像力をもって自由に編み上げた、実に魅力的な流れを持つプログラム。主にフランスの近現代作品を取り上げ、ここでしか聴くことのできない物語を展開する。
 前半でまず演奏するのは、昨年録音もリリースしているラヴェルの作品から。「夜のガスパール」では、緻密でありながら柔軟で自由な彼の音楽性が、大いに発揮されるだろう。サティの「3つのジムノペディ」より第1番に続いて演奏するのは、現代フランス音楽の作曲家ギョーム・コネッソン(1970〜)の作品。持ち前の優れた技巧と表現力を活かし、鮮烈な音とリズムを持つ「Initial Dances」を演奏して、いわば最先端の音楽に到達する。その後、ジョン・ケージの「In a Landscape」で、原点に回帰するかのようなシンプルかつ穏やかな世界へと誘い、終曲にデュティユーのピアノ・ソナタより第3楽章「コラールと変奏」を置く。
 いずれの作品も、中野の澄んだ音色に合いそうな楽曲ばかり。これらの作品を彼の用意したこのストーリーの中で聴くことにより、多くの発見がありそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)

10/27(火)19:00 東京文化会館(小)
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp