ピアノ史の傑作と華麗なるパラフレーズ集
どんな時代のどんな作品も、当時の風を生き生きと感じさせてくれるのが、ピアニスト白石光隆の演奏だ。9月のリサイタルは、まさにそんな彼のユニークな魅力と技量とが存分に発揮されるプログラムが組まれている。
ベートーヴェンの「熱情」ソナタと、ショパンの「幻想ポロネーズ」という、ピアノ音楽史に突出した個性を刻む名作2曲を主軸に置いているが、それらを取り囲むようにして、芸術家が芸術家への最大限のリスペクトを込めていると言える編曲作品を配しているのだ。J.S.バッハの作品をサン=サーンスが、マルチェッロの作品をJ.S.バッハが、シャルル・トレネ作品をワイセンベルクが、R.シュトラウス作品をジンガーがアレンジしたトランスクリプションである。それぞれの原曲は、バロックから近現代まで、協奏曲やシャンソンやオペラと多様なジャンル! 白石の華麗でお洒落なピアニズムが、豊かなアートの“掛け算”を展開してくれることだろう。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年9月号より)
2021.9/8(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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