タンゴのメロディに“情熱”を込めて
ヴァイオリニストの大谷康子がHakuju Hallとともに進める10年がかりのプロジェクトが「大谷康子のヴァイオリン賛歌」。2016年に第1回の公演を開いて以来、今年で5回目を迎える。毎回、ひとつのテーマを掲げてプログラムが組まれており、今回のテーマは「情熱」。タンゴを中心とした凝った選曲が用意される。ヴァイオリニストのリサイタルでタンゴに焦点が当てられるのも珍しいが、実は大谷はタンゴが大好きなのだとか。タンゴ独特の強烈なリズムと、そこに漂う哀愁、胸の奥まで染み渡るメロディに惹かれるという。
プログラムは2部構成。第1部で主役となるのはアルゼンチンが生んだタンゴの革命児、ピアソラの代表作。「アディオス・ノニーノ」や「タンゴの歴史」「リベルタンゴ」ほかの名曲が並ぶ。今年生誕100年を迎えたピアソラの魅力に改めて気づかされることになるだろう。一方、第2部は多彩だ。ストラヴィンスキーの「タンゴ」から、「ラ・クンパルシータ」や「エル・チョクロ」といったタンゴの古典まで。さまざまな姿のタンゴに大谷が情熱を込める。共演は多くのアーティストから信頼を寄せられるピアノの山田武彦、ルネサンス音楽からジャズ、ロック、ワールドミュージックなど幅広く活動するパーカッションのクリストファー・ハーディ。
ひとりのヴァイオリニストが10年越しのシリーズを続けるのは稀有なこと。その折り返し地点にふさわしい熱気にあふれたステージを期待できそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年8月号より)
2021.9/25(土)15:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp