【CD】チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」・第6番「悲愴」/小林研一郎&日本フィル

 2020年のチャイコフスキー生誕180年を記念しての交響曲全曲ツィクルス第3回目のライブだが、齢80を迎えてコバケンの演奏はさらなる深化を遂げている。直接的な迫力や盛り上げに代わり、作品に内在する情念がむしろ内側へ沈滞していく趣。「悲愴」では遅めのテンポによる丹念な表情付けが、外側からの取ってつけたような悲劇性を排して作曲者の真実の心情を表すかのようだ。「ポーランド」でも入念さは変わらず、ともすると長く感じられるこの曲がかくも気高い様相を呈することも稀では。日本フィルは終始つややかかつ安定した音を響かせ決して粗くならない。名演。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2021年9月号より)

【information】
CD『チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」・第6番「悲愴」/小林研一郎&日本フィル』

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」、同第6番「悲愴」

小林研一郎(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団

収録:2021年6月、東京芸術劇場(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00760(2枚組) ¥3500(税込)