出田りあ(マリンバ) & 村治佳織(ギター)

名手二人の初共演! マリンバとギターの新たな魅力を発見

 マリンバとギターの組み合わせによる珍しい演奏を、出田りあ(マリンバ)&村治佳織(ギター)という人気演奏家のデュオで聴く機会が訪れた。プログラムもバッハ、モーツァルトから、フォーレ、ラヴェル、フィンジ、モリコーネ、イエペス、ピアソラ、ファリャなど多彩な作品が揃う。もともと友人として親しい関係にある二人だが、共演は今回が初めてという。

 企画の発案者である出田は、マリンバとギターのために書かれた曲がないことから、魅力的な曲を探して編曲家にアレンジを依頼するところから準備をスタートさせた。

出田「私は10代の頃からギターに興味があって、佳織さんの大ファン。地元の熊本で佳織さんのコンサートがある時には、学校が終わると会場に駆けつけたほど。自分でもギターのレパートリーをマリンバで弾いてみたりしていました。そんな経験から、ギターとの共演なら私がソロではできない曲を、ほかの弦楽器や管楽器とは異なる表現で演奏することが可能になるだろうと思いました。アレンジは編曲家にお願いしつつ、楽器の鳴り方は演奏する本人がいちばん知っているので、そこは二人で意見を出し合って作っていきました」

村治「ギターとマリンバはどちらも楽器の特性から音を長く伸ばせないので、トレモロで余韻を作り出していくなどの共通点があります。また、ギターの弦は『4本のマレット(マリンバなどで使われるバチのこと)』と言われます。実際、一緒に演奏するととても弾きやすい。これは新しい発見でした」

 意外なことに出田がこれまで映画音楽をコンサートで取り上げたことがなかったため、村治から『ニュー・シネマ・パラダイス』やピアソラ作品などもプログラムに入れようと提案した。

村治「私は『ニュー・シネマ・パラダイス』を弟(ギタリストの村治奏一)とデュオで演奏したことがあるので、弟のパートの譜面をお渡しして編曲していただいたんです。仕上がった譜面で演奏してみて、さらに意見を出し合うのも楽しい時間でした」

 プログラムの中にはラヴェル、ルグラン、フォーレというフランスの作曲家の作品もいくつか組み込まれている。実は時期は異なるものの、二人ともパリ留学の経験がある。まだインターネットが今のように普及していない時代、日本と頻繁に連絡を取ることはできず、だからこそ現地での人間関係も濃密だったという。

出田「当時のことについて佳織さんと話したことはありませんが、実際に暮らしてみないとわからないことがいろいろあります。パリの美しさも、生活していく大変さも。お互いにそれを感じて持ち帰ってきたのだろうという空気感はありますね」

 二人とも互いの師匠から、「自分がどういう音楽をやりたいのか能動的に考える」ことを厳しく指導されたという。その体験が今回のような新しい試みの場で生きてくるのではないか。

 演奏する曲の中にはファリャのバレエ音楽「三角帽子」のように、大編成のオーケストラ曲をアレンジしたものも含まれる。そのスケール感をどこまで表現できるだろうか。ギターとマリンバの持つ可能性が大きく広がるコンサート。今から楽しみである。
取材・文:千葉 望
(ぶらあぼ2021年7月号より)

出田りあ&村治佳織 デュオリサイタル
2021.7/9(金)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp

他公演
2021.7/6(火) 佐賀市文化会館(中)(0952-32-3000)
7/7(水) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)(096-355-5235)