岡野博行(日本コロムビア エグゼクティブプロデューサー)

今だからこそチャレンジする新感覚のコンサート・シリーズ

Photo:編集部

 日本コロムビアがまったく新しい2つのコンサート・シリーズを展開する。デビューと同時にきらめくような個性・実力を発揮している新人たちの「セブン・スターズ」(王子ホール)と、今まさに勢いに乗る気鋭の奏者たちが揃った「セブン・スター・アーティスツ」(浜離宮朝日ホール)だ。リアルな演奏会の開催危機に見舞われてきたコロナ禍の一年を経て、なぜ今コンサート・シリーズなのか。日本コロムビアのエグゼクティブプロデューサー岡野博行は熱を込めて語る。

 「日本の若手奏者たちのレベルはぐんぐんと上がっています。クラシック音楽の伝統的な基盤をしっかりと継承し、磨き上げられた演奏技術を持っていながら、現代の感性をもって発信できる新人が次々と現れているのです。一方で、聴衆の耳は洗練され、お客様のニーズも変化を遂げています。かつてのクラシック音楽の受容シーンでは、人から良いと言われたものを受け取る巨匠主義的な傾向もありましたが、今はお客様自身の耳によって優れた才能を探し、応援していくという姿勢になっています」

 こうした時代の潮流を捉えて立ち上げるのが、この新シリーズだという。
 「われわれが行うのは『場』づくりです。自らの耳で才能と出会い育てたいと願うお客様と、可能性あふれるアーティストとをつなぐ出会いの『場』です。有能な人ほど『場』があることで、その才能を開花させていきます。しかし、若いアーティストにとってはそうした場=演奏を発表する機会を持つのは容易ではありません。そこへこのコロナ禍ですから、ますます難しくなってきた。だからこそ今このシリーズを企画しました」

 クラシックの盤石な基礎力とともに、フレッシュな感性と“大人のエンターテインメント”を提供できるある種の余裕。それをバランスよく持ち合わせた奏者たちを、自信をもって世に送り出す。公演が近いアーティストについて、その魅力を語ってもらった。

 「箏のLEOは新しい音楽体験を提供できる画期的なアーティストです。東京藝術大学で古典芸能の実力に磨きをかける箏で、これほど自然にバッハやドビュッシーの音楽も奏でられる人はいない。ヴォーカルユニットの『SiriuS』の二人(大田翔&田中俊太郎)もオペラやリートの基礎がしっかりとあり、映画音楽やミュージカルで極上のハーモニーを聴かせます。ロー・磨秀は、マシュー・ロー名義でブリティッシュな感性の歌声を聞かせるアーティストですが、今回はクラシックのピアニストとしての本領を発揮します。
 神奈川フィルのコンサートマスター二人(石田泰尚&﨑谷直人)の『ドス・デル・フィドル』の繊細な切れ味、新日本フィルの西江(辰郎)・ビルマン(聡平)の上品なふくよかさは、同じヴァイオリン・デュオでもまったく違った響きを聴かせます。『アン・セット・シス』は山中惇史の編曲クオリティが素晴らしく、高橋優介と織りなす2台ピアノの音圧がすごい。
 いずれも伸び盛りのアーティストたちばかりです。ライブでの客席の力と役割は本当に大きい。ぜひ彼らを育て、応援する気持ちでお楽しみいただきたいです」
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年6月号より)

7 STARS (セブン・スターズ) in 王子ホール 
2021.5/22(土)14:00 LEO × CLASSIC
6/13(日)14:00 SiriuS ’S Wonderful Concert
9/10(金)19:00 ロー・磨秀 The Pianist 他

7 STAR ARTISTS(セブン・スター・アーティスツ)in 浜離宮朝日ホール
8/13(金)19:00 ドス・デル・フィドル
10/15(金)19:00 アン・セット・シス プレイズ・ジョン・ウィリアムズ
10/17(日)14:00 西江辰郎・ビルマン聡平 スーパー・ヴァイオリン・ソロイスツ 他

問:Mitt 03-6265-3201
https://www.columbiaclassics.jp/specialcontents/
※各シリーズ、発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。