サーリアホの世界観をトークと演奏で解き明かす
希代のオペラ作曲家として高い評価を受けているフィンランドのカイヤ・サーリアホ。6月6日に東京文化会館で、彼女の話題のオペラ《Only the Sound Remains -余韻-》が日本初演されるのに先立ち、6月1日にワークショップ「カイヤ・サーリアホが描く音風景」が開催される。オペラの深遠な世界を体感し、より理解を深めるための予習として、絶好の機会となろう。
当日の前半はミニコンサートで、サーリアホのフルートとカンテレによる「ライト・スティル・アンド・ムービング」他の器楽曲が演奏される。エイヤ・カンカーンランタが奏者を務めるカンテレは、ツィターのように指で弦をはじいて音を出すフィンランドの伝統楽器。シンプルな五弦程度のものから、数十弦のものまであり、ソロでも魅力を発揮してきた。民族叙事詩「カレワラ」にも登場し、同国に根付く民族精神を反映している存在であることから、サーリアホの創作の根源にもふれることができるだろう。
後半は《Only the Sound Remains -余韻-》についての対談。オペラは能にもとづく二部構成で、詩歌管絃に秀でた平経正の霊をめぐる 『経正』と三保松原が舞台の『羽衣』といった幽玄な物語が、独特の研ぎ澄まされた響きで綴られていく。作曲者本人、指揮者クレマン・マオ・タカス、演出のアレクシ・バリエール、フルート奏者カミラ・ホイテンガが対談形式で内容を紹介する予定だ。サーリアホならではのモダンな美の世界とその創作の秘密に触れる貴重なひとときとなる。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2021年6月号より)
ワークショップ「カイヤ・サーリアホが描く音風景」 2021.6/1(火)18:30 東京文化会館(小)
オペラ『Only the Sound Remains -余韻-』 6/6(日)15:00 東京文化会館(大)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp