古典の愉悦と後期ロマン派の大サウンドで気分上昇
5月の新日本フィル定期「ジェイド」は、弾けるソロの妙味と大オーケストラの醍醐味を併せて味わえる好プログラムだ。しかも指揮は秋山和慶、ソリストは伊藤恵、小菅優(共にピアノ)と日本屈指の実力派が揃う。
まずは、2人のソリストの妙技を満喫できる愉悦感満点の名作、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲。今回は、1983年ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ部門での日本人初優勝以来、内外で活躍している伊藤恵と、欧米各地の著名なステージで実績を重ね、近年はベートーヴェン等での成果も顕著な小菅優が、スリリングな競演を繰り広げる。むろん各々個性豊かだが、ザルツブルクのモーツァルテウムで学び、独墺ものが十八番という共通点もある。ならば同じフレーズを交互に弾く場面の多い本作で、いかなる競奏をみせてくれるのか? 大いに楽しみだ。
後半はR.シュトラウスの「アルプス交響曲」。登山から下山までの情景や登山者の感情など、アルプスの1日を描いた音の大パノラマである。本作は何と言っても、12本のホルン他の金管バンダやオルガン、ウインドマシーン等を含む超巨大オーケストラのサウンドが聴きもの。最近各パートに名手を加えた新日本フィルのパフォーマンスへの期待は大きい。また秋山は大作の造作に定評があるだけに、全体の構築も要注目。ここは今年80歳を迎えた大ベテランが、丹念かつ見通しよく聴かせてくれるに違いない。
協奏曲は明朗で愉しく、交響曲は開放的でスペクタクル。聴けば気持ちも明るく上向きになること請け合いの本公演で、日頃の憂鬱を豪快に吹き飛ばそう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年5月号より)
第633回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2021.5/20(木)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp