東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
R.ワーグナー 楽劇《ニーベルングの指環》ハイライト特別演奏会 ~飯守泰次郎 傘寿記念~

マエストロが築き上げるワーグナー演奏の集大成

 日本人がワーグナーのライブ演奏に比較的簡単に接することができるようになったのは、そんなに古いことではない。長大でパワーの必要なその音楽は、ひと昔前まで踏破自体が困難と考えられていたのである。

 現在のワーグナー演奏の活況ぶりを振り返るとき、ドイツでの歌劇場の経験が豊かで、バイロイト音楽祭の制作にも参画した飯守泰次郎がもたらしたものは極めて大きかったと言えるだろう。21世紀に入り、飯守は後に桂冠名誉指揮者に就任することになる東京シティ・フィルと、「オーケストラル・オペラ」と銘打った演奏会形式のワーグナー上演に取り組んだ。この経験はその後、新国立劇場のオペラ芸術監督として世界に伍するプロダクションを作り上げた成果にも大きく寄与したはずである。

 そのマエストロもめでたく傘寿ということで、東京シティ・フィルが《ニーベルングの指環》のハイライト特別演奏会を開催する。年輪を重ねたコンビの“指環”が戻ってくるだけで興味津々だが、今回はシュテファン・グールド(ジークフリート)やトマス・コニエチュニー(アルベリヒ、ヴォータン、グンター)、アルベルト・ペーゼンドルファー(ハーゲン)といった世界で活躍する第一級のワーグナー歌いが勢ぞろい。また、ブリュンヒルデには近年脚光を浴びるダニエラ・ケーラーが起用されている。公演の名誉監督にはバイロイト音楽祭の総監督でワーグナーのひ孫にあたるカタリーナ・ワーグナーがクレジットされ、総本山の後押しのもと飯守の偉業を祝福するにふさわしい布陣と言えるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年5月号より)

*ハーゲン役のアルベルト・ペーゼンドルファーは体調不良により来日が不可能となったため、代わりに妻屋秀和が出演します(4/28主催者発表)。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

2021.5/16(日)14:00 東京文化会館
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp