京都コンサートホール 2021年度自主事業ラインナップの聴きどころ

国内外の名手が集結! 京都ならではの独創的なプログラムを力強く発信する

京都コンサートホール大ホール内観

 2020年、京都コンサートホールは開館25周年を迎え、ベートーヴェン生誕250年も重なり、「特別な1年」を迎えるべく多種多様なコンサートやイベントを予定していた。しかし、コロナ禍の影響により多くが中止や延期となってしまった。そのなかで迎えた2021年、京都コンサートホールは再び新たな気持ちでさまざまなコンサートを企画した。

  3月19日、同ホールのアンサンブルホールムラタにおいて、2021年度自主事業ラインナップの記者発表が行われた。登壇者は京都市交響楽団常任指揮者兼芸術顧問、京都コンサートホール館長の広上淳一と同ホールプロデューサーの高野裕子。「いまこそ、音楽の力を」という今年のテーマのもと、3つのコンセプトを主軸にした企画の数々が発表された。

 まず、1つ目のコンセプトは1900年代初期から中期にかけての音楽にフォーカスすること。この時代、世界はスペイン風邪に見舞われ、多くの犠牲者が出た。第一次世界大戦やロシア革命も起こり、大変な状況を迎えていた。そのなかで人々の暗澹たる思いを払拭すべく、多くの作曲家が力強く革新性に満ちた作品を編み出した。今回はその時代の音楽を中心とする、ストラヴィンスキーやラヴェルなどの選曲がなされているのが大きな特色だ。
 ここで大きな聴きものとなる公演をピックアップしていきたい。

広上淳一 (c)京都コンサートホール

 開催から25年目を迎える「京都の秋 音楽祭」が9月に開幕。オープニングの記念コンサート(9/12)では、大友直人指揮の京都市交響楽団と冨田一樹(オルガン)で没後100年を迎えるサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」ほかが演奏され、国内最大級のオルガンの音色を披露する。また、このオルガンの響きをより多くの人々に楽しんでもらうため、「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」も企画され、一般市民各公演100名を招待するという(9/18, 2022.2/26)。

 続いて「The Power of Music 〜いまこそ、音楽の力を〜」と銘打ったシリーズでは1つ目のコンセプトが強く反映されたコンサートが聴ける。広上と関西の音楽大学など7校から選抜された学生とでストラヴィンスキーの「兵士の物語」を(21.10/16)。朗読は京都在住の狂言師、茂山あきらが担当する。これはプログラムの第2のコンセプトに掲げられた「京都でしか聴くことのできない音楽を発信したい」というメッセージが込められた企画と言えるとともに、第3のコンセプト「若手音楽家や学生を起用し、新しい人材を紹介していく」ことにもつながる。また、石上真由子(ヴァイオリン)らのアンサンブルによる「ラヴェルが幻視したワルツ」では、J.シュトラウスⅡの「皇帝円舞曲」(シェーンベルク編)やラヴェルの「ラ・ヴァルス」などを組み合わせた興味深い演目が予定されている(10/2)。

 そして「世界の響きを京都から」シリーズでは、ショパンのピアノと管弦楽のための作品や没後50年を迎えるストラヴィンスキーが取り上げられる。「ショパン!ショパン!!ショパン!!!」では實川風や福間洸太朗、ニュウニュウといった国内外のピアニストと京響によるオール・ショパン・プログラムを聴くことができる(11/20)。ワレリー・ゲルギエフ指揮のミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団も参加し、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番とストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」が披露される。藤田真央がソロを務めるのも嬉しい(11/21)。

 こうした演奏家による練られた上質で魅力的なラインナップについて、広上館長は「2008年度から京都市交響楽団の指揮を務め、世界に通じるオーケストラを目指してきた。その本拠地である当ホールは学術都市・京都の中心であり、人々が自然に集まる場所にしたい」と語った。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2021年5月号より)

問:京都コンサートホール075-711-3231
https://www.kyotoconcerthall.org
*各公演、発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。