俊才の3年の成果を記す、千一夜物語
三ツ橋敬子は、東京フィル100年の歴史の中で、定期演奏会を任された初の日本人女性指揮者である。毎回が真剣勝負といえども、在京オケの定期となれば重みが違う。彼女は2011年と12年の2回定期を指揮し、確かな成果を挙げた。また同時に東京フィルはいち早く彼女を認め、その音楽作りを最も深く知る楽団といえるだろう。三ツ橋は、今年2月、同楽団が文京シビックホールで行う《響きの森クラシック・シリーズ vol.47》に登場する。その繋がりから真価が最大限に発揮されるのは間違いない。
三ツ橋は、08年ペドロッティ国際指揮者コンクールで最年少&女性初の1位、10年トスカニーニ国際指揮者コンクールで女性初の2位を獲得した。以来、ヴェルディ響、スロヴァキア・フィル、都響、東響、日本フィル、新日本フィルほか多数の楽団に客演。ヴェネツィアに拠点を置く彼女ならではのカンタービレと生気溢れる、濃密で引き締まった音楽を聴かせてきた。今回はこうした約3年を経ての進化を、あらためて確認できる。
1曲目の「ローマの謝肉祭」序曲は前記の三ツ橋の特徴がフルに生きる作品。次のラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲は、左手のピアノ詩人・舘野泉の極めつけのソロが、言わずもがなの聴きものだし、三ツ橋にとっては12年の定期で舘野と同曲を共演した経験が強みとなる。そして後半の「シェエラザード」は、色彩感、オリエンタリズム、物語性の表現、中でも旋律の歌わせ方に注目したい。
もちろん純粋に名曲を楽しむもよし。毎回ほとんど完売のシリーズゆえ、チケットの確保はお早めに!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年2月号から)
★2月8日(土)・文京シビックホール Lコード:37847
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp