亀井聖矢(ピアノ)

自由さ、楽しさを感じていただける音楽を追求していきたい

C)山田 翔

  「昨年末は多くの演奏機会に恵まれ、レパートリーを一気に増やしました。2021年はそれらの曲目に一層の磨きをかけ、さらに新しいプログラムにも挑戦するつもりです」

落ち着いた口調ながら熱意を滲ませる19歳のピアニスト、亀井聖矢。19年にピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、日本音楽コンクール第1位というダブル受賞で注目を浴びるも、20年前半はコロナ禍で演奏活動がままならなかった。昨年後半からはステージでの演奏機会が増えて勢いづいてきた。そんな亀井がHakuju Hallのリクライニング・コンサートに登場する。ラヴェルの「夜のガスパール」、ショパンのソナタ第3番というプログラムだ。

 「『夜のガスパール』はもともとベルトランの詩に基づいた作品で、ストーリー性を感じさせる3曲で構成されています。怪しげなムードや、少し怖い雰囲気、ふと消え入るような音使いで惹きつけられる場面も多い。もとの詩をご存知なくとも、自由に情景を想像していただけるような演奏をしたいですね。ラヴェルの音楽は緻密に書かれていて、ハーモニーの表現が豊か。それでいてどこかシュッとスタイリッシュで、自分の作品から一歩引いて客観的に捉えているような印象もあります。僕は今、演奏と同時に作曲も勉強していて、ピアノ三重奏曲や五重奏曲などを書いているのですが、ラヴェルの音使いからは大きな刺激を受けます」

昨年、ショパンのソナタは2番と3番に同時に取り組み、両者の特性の違いを実感している。
 「2番は激昂したかと思えば急に落ち着きを見せたり、理解に苦しむくらいの激しさを持っていますが、今回演奏する3番は後期の作品ということもあり、激しさの中にも堂々とした高貴さがあります。ショパンというと、甘く柔らかな印象や、民族的な舞曲の印象が強いかもしれませんが、ソナタには4楽章までエネルギーを持続していく構築力や、ベートーヴェンからの影響も感じられます。緩徐楽章は回想シーンを思わせるような美しさ。リクライニング・シートでのコンサートですから、深くリラックスして聴いてほしい。寝ちゃってもいいです(笑)」

極上のエンターテインメントとしてコンサートを捉える亀井。趣味はマジック。工夫や努力を重ねて人を感動させるマジシャンに共感を覚えるという。
「ピアノの練習に疲れたらトランプを触っています。演奏もマジックも“努力”を感じさせたら完成形とは言えないですね。お客さまに自由さ、楽しさを感じていただける音楽を追求していきたいです」
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年3月号より)

第158回 リクライニング・コンサート 亀井聖矢 ピアノ・リサイタル
2021.4/14(水)15:00(完売) 19:30 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp