【CD】ニューイヤー・コンサート2021/ムーティ&ウィーン・フィル

 3年ぶり6度目の登場となるムーティを迎えてのニューイヤー・コンサートは無観客。ラデツキー行進曲の手拍子もない。それでもオーストリアのTV中継の視聴率は54パーセントに上ったという。聴けば納得。華やかなサウンドがたちまちに室内を満たし、新春を寿ぐ。ワルツはぐっと踏ん張ったところから流れだし、ポルカは快活、陽気に駆け抜ける。今年はひときわ輝いているぞ――そう思うのは当方の耳や精神状態のせい? そんなことはない。このような時だからこそ、彼らは極上の音のメッセージを届けようと張り切っているのだ。音楽は人生を、その苦しみにあって慰め、明るく勇気づけてくれるものだ、と。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年3月号より)

【information】
CD『ニューイヤー・コンサート2021/ムーティ&ウィーン・フィル』

スッペ:ファティニッツァ行進曲/ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル「憂いもなく」/ツェラー:ワルツ「坑夫ランプ」/ミレッカー:ギャロップ「贅沢三昧」/コムザーク:ワルツ「バーデン娘」/J.シュトラウスⅠ:ヴェネツィア人のギャロップ、ラデツキー行進曲(ウィーン・フィル編)/J.シュトラウスⅡ:ワルツ「春の声」 他

リッカルド・ムーティ(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

収録:2021年1月、ウィーン(ライブ)
ソニーミュージック
SICC-2221,2222(2枚組) ¥2900+税