11月5日から始まった「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2020」が14日の東京公演をもって幕を閉じた。コンサート直後の同日18時30分から、サントリーホール ブルーローズにて、全日程を終えての記者会見が開かれた。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団より楽団長のダニエル・フロシャウアーと事務局長のミヒャエル・ブラーデラー、招聘元のサントリーホールから、同ホールの館長でソリストとして共演した堤剛、同ホール総支配人の折井雅子が出席した。
(11/14 サントリーホール ブルーローズ(小) Photo:M.Suzuki/Tokyo MDE)
会見で、まずフロシャウアーは「今回来日できたのは、オーストリアのクルツ首相、菅首相、両国の大使、外務省のおかげ、感謝します。実現できたのは両国の大きな大きな勇気の賜物。ブラボーの声を実際に聞くことはできなかったけれど、音楽を愛している人々の気持ちは十分感じることができました」と語った。また、2021年のニューイヤーコンサートについて、今後制限が出てくるかもしれないが100%やるつもりでいる、とも述べた。
そして、ツアーを終えてブラーデラーの感想。
「これから他のオーケストラでも公演を開催する勇気をもてるような道筋を示すことができた。これは大きな挑戦だったが、現状、メンバーの全員が陰性で健康、日本の皆さまにも危険を及ぼすようなこともなかった。今後の良い指針になる証ができた」
堤は、「ウィーン・フィルがきて本当によかった。とても嬉しい。ありがとう。と、多くの人からメッセージをもらった」と実感を込めて語った。会見後、14日深夜の便で彼らは帰国の途につく。
今回はチャーター機で来日し、入国時にウイルス検査。滞在中は、貸切バスや新幹線の車両を貸切で移動、宿泊施設とコンサートホールの移動以外は一切の外出ができないなど、ウィーン・フィルの楽員には相当な精神的負担があったであろう。同楽団に十年来の知人がいるという日本人音楽家も今回ばかりは面会が叶わなかったという。
しかし、披露した演奏やステージでの彼らの姿は、そのような困難な環境を微塵も感じさせないほど伸びやかで堂々としたものだった。久々に目にした客席を埋め尽くす観客、彼らの万雷の拍手はまさにそれを物語っていた。これまでの日本公演においても数々の名演を繰り広げてきたウィーン・フィル。この先、年月が経っても2020のツアーは、かけがえのない輝きを放ち、語り継がれていくことであろう。