二刀流でバッハに迫る
2010年にライプツィヒで開かれたバッハ国際コンクールで2位入賞を果たすなど、数々の受賞に輝いた俊英ヴァイオリニスト、佐藤俊介。国際的に活躍を続けている彼が、第一生命ホールのシリーズ《昼の音楽さんぽ》に登場、大バッハの無伴奏作品をモダンとバロック、2つの仕様の楽器で弾き分けるユニークなステージを展開する。
東京出身の佐藤は2歳でヴァイオリンを始め、4歳で渡米。ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイらに師事。2003年からはパリ市芸術大などに学んだ。「古楽に興味を持ったのは、ヨーロッパに移ってから。様々な疑問への“解決手段”となった」と佐藤。現在は、ミュンヘン音大で研鑽を積む一方、古楽・モダンを問わず、一流楽団に客演を重ねている。
「音楽を通して“語る”ことが最も大切」と熱い思いを語る佐藤。「それは、使う楽器がバロックかモダンかということには関係がない。ただ、常にきれいに弾いて終わり、じゃだめ。聴いて衝撃を受けたり、涙が止まらなかったり、聴き手が新しい“何か”を家に持って帰れる演奏をすべきです」。
今回は、まずバロック・ヴァイオリンを使い、17世紀イギリスで活躍したドイツ人作曲家バルツァーの「グラウンドによるディヴィジョン『ジョン、さあキスして』」とバッハの「無伴奏パルティータ第3番」を。さらに、モダン楽器に持ち替え、「無伴奏ソナタ第3番」を披露。「モダンとバロックを、もっと往き来のある世界にしたい」と語る佐藤自身にとっても、念願のステージと言えそう。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2013年12月号から)
★12月10日(火)・第一生命ホール
問 トリトン・アーツ・ネットワーク・チケットデスク03-3532-5702
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