古畑祥子(ピアノ)

人々の心に響くショパンを
〜ドイツを拠点に活躍するピアニストが初の日本ツアー開催〜


 ドイツを拠点に活躍する実力派ピアニストの古畑祥子が、名古屋・大阪・東京・福島を巡るリサイタル・ツアーを10月に行う。アメリカ、ヨーロッパ各国で高い評価を受ける彼女が、「長くドイツにいる私が、祖国である日本の皆さんへ“何か”を伝えることができるなら」と敢行する初の本格的な帰国ツアー。「災禍にある今こそ、求められている音楽。旋律が直接、心に響いてくる」という、オール・ショパンのプログラムで臨む。

「私にとって、コンサートは単に、作品の提示やご紹介をする場ではありません。ステージで自分をさらけ出し、それが聴衆の人生や生命と重なって、さらには作曲家の人生と重なることも可能な、“魂を感じる”特別な空間です。同じ空間で音楽を通し人と心、魂、生命を共有するために、弾きながら常に、聴衆の感情やエネルギーを感じ取るようにしています」

 日本ツアーでは、「幻想即興曲」や「英雄ポロネーズ」を軸に、ノクターン第20, 8, 13番、練習曲、ワルツなどを配する。
「まさしく、ピアノのために作られた作品。その音色と旋律がマッチして、人々の心に直に響き、心の襞をなでます。旋律が重要なので、多彩な音色や強弱の表現が必須に。ここへショパン独特の和声を、慎重に絡めてゆく。自分が作品をどう感じ取ったか、より繊細に伝えられる音楽性が求められます」

 音楽好きの両親の影響で、3歳からピアノを始め、武蔵野音大を卒業後に渡独。デトモルト・デュッセルドルフの両音大大学院に学んだ。
「ドイツを選んだのは、何より、ベートーヴェンとシューマンが好きだったから。彼らが生きた時代だけでなく、過去や未来をも見据えた技法や旋律、和声構造を備え、ドラマティックさや情景、情熱、哲学など、すべての要素を包含した作品には、常に新しい発見があり、深い芸術性を感じます」

 さらに「ドイツは古い伝統を大切にしつつ、進取の気鋭に富んでいるから」とも。
「都市は分散され、大きな自然が失われていません。そして、街ごとに必ず、劇場があります。クラッシック音楽は自然の静寂の中から生まれたのではないか、と考える私にとって、人間と自然、文化の調和も、重要なテーマです」

 新型コロナウイルス禍は、ドイツでの文化活動にも、深刻な影響を及ぼしている。
「この2ヵ月で、5つのコンサートがキャンセルとなり、ひとつは無観客でのライヴ放送となりました。しかし、オンラインで一部の生徒たちへのレッスンを続けていて、最低限の生活はできているため、もっと大変な状況の、フリーランスに回ればよいと、芸術家への補助金の申請もしませんでした」

 東日本大震災の折には、チャリティーを行って義援金を被災地に贈り、現地でステージも開くなど、社会貢献活動にも力を注いできた。
「今は、人々の体が音楽を欲しているように思います。人間にとって、文化がどれほど大事か。改めて見直せる機会ではないでしょうか。かたや、オンラインで様々なことが出来ても、観客とパフォーマーとの感情やエネルギーの交差、スピリチュアルな感覚はありません。再び一つの空間で、音楽の素晴らしさを分かち合える日を、今から心待ちにしています」

 そんな彼女にとって、“ピアノ”とは。「総合芸術を可能にする存在。オーケストラが演じられるだけでなく、美術や演劇など、芸術のすべてを表現できると思います」。
 では、“音楽”とは。「人間の精神の血肉となり、各々が魂と向き合い、感じられる存在」。そして、「私には好きなものが二つある。それは、人間と音楽だ。なぜなら、そこには愛があるから」──ルーマニア出身の鬼才指揮者、セルジュ・チェリビダッケ(1912~96)の言葉を引用して答えてくれた。
 音楽家としての最終目的を「音楽を通じて、ヒューマニズムを理解し、近づくこと」と語った。
取材・文:寺西 肇

古畑祥子 ショパン ピアノコンサート
2020.10/8(木)18:00 カワイ名古屋コンサートサロン「ブーレ」
10/10(土)14:00 豊中市立文化芸術センター アクア文化ホール(中)
10/12(月)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
10/16(金)18:00 いわき芸術文化交流館アリオス(小)
問:SF Music Promotion sfmusicpromotion@gmail.com
https://www.sachiko-piano.de