ベルリンにいる樫本大進さんよりメッセージが届きました!

いまドイツでは厳しい外出規制が敷かれており、樫本大進さんがコンサートマスターを務めるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団も、日本同様、演奏会を開催できない状況が続いています。
しかし、その困難な生活の中においても尽きない音楽への情熱、家族やファンを思う気持ちがこもったメッセージは、不安を抱え過ごす我々に、いつかくるであろう穏やかな日々への希望を与えてくれます。

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日本の音楽ファンの皆様へ

 全世界を脅かすコロナウィルス感染症の影響は、私たちがこれまで経験したことのない事態をもたらしています。未知のものへの恐怖とどのように向き合うか、様々な異なる文化的な土壌を持つ異なった土地で、それぞれに異なった対応が成されていることは、多くの人たちが関心を持って見ていることです。

 ドイツにおけるすべての文化イベントのキャンセルというのは、言うまでもなく私たち音楽家に大打撃を与えています。何もなす術なく、自分ではどうすることもできない状況に直面し、そして何より、音楽を通じて精神的なサポートを誰にも届けることが出来ないということが、とても奇妙なことのように感じます。どんな社会も文化の上に成り立っています。特にヨーロッパでは、クラシック音楽は人々にとって絶対に欠くことのできない特別な意味を持つものです。ベルリンでは、人々の日常生活を維持するために必要な場所のみ営業を続けることが許されていますが、その中に、本屋さんが含まれているのは、とても興味深いことですし素晴らしいことだと思います! ですから、私たち音楽家も、きっと間もなく、再び音楽作りを再開し、音楽を皆さまとシェアできる日が来るはずだと信じています。

 それまでの間、いまの社会生活の制限の中で、私は自宅に留まり、家族と共に多くの時間を過ごし、子供たちの世話をすることが出来る状況にあります。事実、私はこの事をとても嬉しく思っています。毎日子供たちをベッドで寝かしつけることが出来ること、子供たちに「お父さんは再び仕事でしばらく家を留守にしなければらならない」と言わなくても良いということは、私にとっては普段得ることの出来ない喜びです。学校や幼稚園、そして子供たちの遊び場もクローズしてしまっていますが、この特殊な貴重な時間を大切にしようと努めています。

 皆さまが、この我慢の時を健康でお過ごしくださることを祈っています。そして何より、先が不透明なこの厳しい時だからこそ、皆さまの心に真心と愛があり続けるようにと願っています。このパンデミックを封じ込めるための重要な予防策をどうかしっかりと講じてください。そして、この時期を乗り越える人類の強さを信じましょう。

 音楽を通じて皆さまと心をひとつにできる日が少しでも早く来ることを、そして、皆さんのためにも自分自身のためにも、この状況を必ずや乗り越えていくことができることを願っています。


樫本大進  
ベルリンにて  


4月9日に撮影されたベルリン・フィル デジタルコンサートホール イースター@フィルハーモニー音楽祭の演奏収録時の一コマ
第1コンサートマスターで、フィルハーモニクスのノア=ベンディックス・バルグリー(右)、配信プログラムの案内役でホルンのサラ・ウィリス(後方)と
(C) Christoph Franke