今年5月9日から28日まで、大分県の別府・大分両市で開催される「第22回 別府アルゲリッチ音楽祭」(総監督:マルタ・アルゲリッチ)の記者発表会が都内で行われ、ピアニストで同音楽祭総合プロデューサーの伊藤京子らが出席した。
「育む」「アジア」「創造と発信」をキーワードに、1998年にスタートした音楽祭の今年のテーマは「音楽とSDGs 〜未来と出会うために」。SDGs(エスディージーズ)とは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な17の開発目標」のことで、その実行に向けて、音楽祭を通じてメッセージを発信していく。17の目標の中から「4:質の高い教育をみんなに」「11:住み続けられるまちづくりを」「16:平和と公正をすべての人に」など6つの目標が同音楽祭にマッチしたものとして掲げられているが、これらの理念は、子どもたちのための教育プログラムでもあるピノキオコンサートの開催など、音楽祭が従来から取り組んできたことにも繋がると伊藤は語る。
「音楽祭を通して、芸術の本質や役割、特に芸術の社会に対する役割は何かということを非常に考えるようになりました。ピノキオコンサートの取り組みはプレ期間も含め25年前に始めましたが、教育というものを意識させられるなかで、子どものための環境作りが十分にできていないという思いが高まっていました。一昨年、SDGsを国連が提唱していることを知りましたが、これまでの音楽祭の取り組みが(17の目標のうち)6項目に当てはまることがわかりました。これらの目標が達成されるには“人”というものがたいへん重要だと思っています。芸術の目に見えない価値が人を作っていくのです。そのことが18番目の開発目標に掲げられるような活動になればいい。未来においても私たちと同様、音楽を聴けるような豊かで平穏な社会であるように、という願いをこめて、今回こうしたテーマを設定し、アルゲリッチも共感してくれました」
音楽祭の中核をなすのは世界のトップ・アーティストによるシリーズ。「ベスト・オブ・ベストシリーズVol.8 室内楽コンサート〜アルゲリッチ、キョンファと奏でる」では、この日アルゲリッチ(ピアノ)とチョン・キョンファ(ヴァイオリン)が初共演を果たす。二人のレジェンドに、さらに音楽祭アドバイザリー・コミッティを務めるミッシャ・マイスキー(チェロ)も加わる豪華なステージは、大きな話題を呼びそうだ(5/23)。「オーケストラ・コンサート〜巨匠がいざなう未来」では、チョン・ミョンフンの三男で指揮者のチョン・ミンが初登場。アルゲリッチがプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番、藤田真央がラフマニノフの同第2番で競演する。管弦楽は3回目の出演となる東京音楽大学シンフォニーオーケストラ(5/16)。恒例の「ピノキオコンサート〜未来と出会うために」は、開館30周年を迎えた大分市の平和市民公園能楽堂で開催。アルゲリッチと伊藤がドビュッシーやベートーヴェンのピアノ連弾曲を披露する予定(5/20)。また、東京でもピノキオの取り組みを支援する「アルゲリッチとマイスキー至高のデュオ」が開催。ブラームス、フランク、シューマンの作品で巨匠二人の円熟の境地を堪能できる一夜となる(5/26)。
そのほか、教育プログラムとしては、「公開ヴァイオリン・マスタークラス」(講師:ウィリアム・チキート)(5/17)や音楽祭オープニングを飾る「大分県出身若手音楽家コンサート」(5/19)、「世界へ羽ばたく音楽家たち Vol.7 亀井聖矢ピアノ・リサイタル」(5/10)、音楽祭の秘蔵アーカイブ映像を上映する「フィルムコンサート」(5/24)が予定されている。また、関連コンサートとして、群馬県の高崎芸術劇場にて、マイスキーと日本の若手クァルテットが共演する公演も行われる(5/28)。
別府アルゲリッチ音楽祭
2020.5/9(土)〜5/28(木)
[別府]しいきアルゲリッチハウス、ビーコンプラザ
[大分]iichiko総合文化センター、平和市民公園能楽堂
3/7(土)発売
問:アルゲリッチ芸術文化振興財団0977-27-2299
https://www.argerich-mf.jp