飯森範親(指揮)

オケと吹奏楽に区別はありません

C)山岸 伸
 数多のオーケストラで活躍中の飯森範親が、2020年1月から東京佼成ウインドオーケストラの首席客演指揮者に就任する。実は彼、吹奏楽との関わりも浅くない。
「中学校の吹奏楽部で3年間クラリネットを吹き、コンクールにも出ましたし、高校では部員でないのに定期演奏会を指揮しました。プロとしては1991年に大阪市音楽団を振ったのが最初。その後も複数の楽団を指揮しています」

 日本の最高峰・佼成ウインドとは、2012年、17年の定期と19年の東北ツアーで共演。12年の圧倒的名演以来、楽員からの要望が絶えず、今回の就任と相成った。
「佼成ウインドは、楽員一人ひとりのポテンシャルが物凄く高く、音楽的に深いアプローチが可能な楽団。オリジナル曲を演奏してもクラシカルなテイストを感じますし、中低音パートの倍音が豊かで、ピアニッシモが巧いのにも感心させられます」

 就任記念演奏会は4月の定期。これは楽団創立60周年の新シーズン開幕公演でもある。演目は何と全て吹奏楽オリジナル曲。「就任にあたってまずは吹奏楽の名作をと考えた」という。前半は、C.ウィリアムズの「献呈序曲」、A.リードの「アルメニアン・ダンス Part Ⅰ,Ⅱ」と古典的名作が並ぶ。

「『献呈序曲』は往年の名曲。かつて演奏した同世代にアピールできると思います。そしてA.リードは外せません。中でも聴き応えがあって心が躍る作品といえばやはり『アルメニアン・ダンス』。それにPart Ⅰだけでは楽しみも半分なので全曲をと。コンクールに即した演奏ではなく、リードがスコアに書いたもの─例えばハチャトゥリアン等と共通する独特の民族色─を読み取って、本来あるべき音楽を表現したいと思っています」

 後半は、スイスの作曲家F.チェザリーニの「青い水平線(ブルー・ホライズン)」と交響曲第1番「アークエンジェルズ」。
「いずれも音楽にスケール感があって、響きに好感が持てる作品。軍楽隊をベースにしたアメリカに比べて、ヨーロッパの作曲家の根底には、ワーグナーやマーラー等の響きがあるように感じます。特に交響曲はオルガンが入る30分もの大作で、響きの作り方にマーラーと通じる面があり、同じスイスにルーツをもつオネゲルに似た部分もあります」

 彼の中では吹奏楽とオケに分け隔てはない。
「作曲家が書いたスコアがあって、管楽器と打楽器が使われているというだけです。各楽器のエキスパートの方々のベスト・パフォーマンスを引き出し、鳥肌が立つような音楽を生み出すのが指揮者の役目。そこに何の区別もありません。今回は、ウインドアンサンブルの名作を、(A.リード作品のバス・サックスも含む)オリジナルの響きでお聴かせしますので、ぜひお楽しみください」
 これはクラシック・ファンも注目すべき公演だ。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年2月号より)


*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は中止となりました。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

東京佼成ウインドオーケストラ 第148回 定期演奏会
2020.4/29(水・祝)14:00 東京芸術劇場コンサートホール 
2020.1/22(水)発売
問:東京佼成ウインドオーケストラ チケットサービス0120-692-556 
https://www.tkwo.jp